厚生労働省が先日発表した雇用均等基本調査で、男性の育児休業取得率は30.1%、初の3割越えとなった。
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また、同時期に発表された学生を対象にした若年層の意識調査では「育休を取得したい」と考えている男性は84.3%と、取得意識の高さが現れる結果となった。
この背景について、若年層の意識調査の設計に関わったワーク・ライフバランスの小室淑恵社長は、2022年の法改正への動きが大きな転機となったと話す。
この改正では育休取得の意向を面談などで確認することなどが義務付けられるなど、「育休を当たり前にとれる社会」を目指した法改正が行われた。
「改正以前は、本人が申し出てきたら企業は断れないとは決まっていたものの、事実上『申し出るなよ』というプレッシャーが働いていた職場が多く、本人が言い出せなかった。これが『企業側から聞かなくてはならない』と変わったことで、本来の希望が一気に噴出し、国民の希望が叶えられるようになった。非常に良い法改正だった」(小室社長、以下同)
こうした社会全体での意識改革により、男性の育休取得期間にも変化が現れている。かつては5日未満の人が6割程度だったのに対し、現在は2週間から3カ月の育休を取得する人が約半数と大幅に増加している。産後のホルモンバランスの崩れが引き起こすといわれる産後鬱を防ぐためにも、ある程度長い期間の育休は必要だと小室社長は話す。
「まだまだ希望した期間の育休を取れているという状況には程遠い。『お金の心配』、次いで『職場に迷惑がかかる』などの理由から思ったようには取れていないという調査結果がある」
現在、育休中に受け取れる育児休業給付金は賃金の67%で手取りの8割程度だが、来年度の法改正で、夫婦のどちらも2週間以上の育休を取得すると手取りの100%が上限1カ月で支給されるようになる見込みだ。
「今回の若年層調査で、3割の学生は半年以上の育休を考えていると分かり、普段から働き盛りの男性が数カ月抜けても回る職場を作るという課題が企業に明確に突きつけられた」
小室社長は、育休の取得意欲の高まりを反映した今回の調査結果を受け、ゆとりのある人員確保が今後企業側には求められると指摘する。
「日本では時間外に仕事をした際の割増率はたった1.25倍だが、他の先進国は1.5倍だ。この違いが“ギリギリの人員を雇用しながら残業で凌ぐ”経営スタイルと、“短時間の社員を増やす”スタイルという差を生んでいる」
育休取得者のしわ寄せが不満を生み、「子持ち様」という言葉がトレンドになる世の中。いつ誰が休んでも回る職場環境づくりが解決のカギだと小室社長は話す。
「男性育休などの問題が発生するとそこに絆創膏を貼りたくなるが、根本となっている労働基準法を国民全員で議論するべきだ。メディアももっとそこを追求して労基法の改正をグローバルスタンダードの領域まで持っていくことが重要だ」
今回の意識調査によると、就職活動においても男性の育休取得が重視される傾向にあり「男性の育休取得実績がない企業に行きたくない」という声も多くなってきているという。
この点についてノンフィクションライターの石戸諭氏は「育休取得率が0、あるいは低い職場に対して『ブラック企業なのでは?』と疑うのは当然だ。これが現在の価値観であるため、取得率が低い企業も『今は低いが今後は希望通りちゃんと取らせます』などとアピールする姿勢が問われてくるだろう」と指摘した。
さらに石戸氏は「育児に限らず、カバーできる仕事環境を整える必要がある」と強調した。
「育児に限らず、『誰かのために休まなきゃいけない局面』は誰にでも生じ得る。それは、パートナーの体調不良かもしれないし、介護かもしれない。自分だってケガや病気をして誰かに休みをとってもらうことが必要になるかもしれない。そんなアクシデントが生じた際に『どうぞ休んでください。みんなでカバーしますから』という環境を用意するのは経営者の責任だ。育休の話をきっかけに意識改革が広がればいい」
小室社長も“頭数が多い職場”のメリットについて「育児や介護、子供の不登校の対応、発達障害がある方など『今日は短い時間しか働けない』という場合もある。色々なことを抱えた方たちが『誰かが急に休むのは想定済みの職場なんだ』という中で助け合うことができ、『子持ち様』議論も解決してくるのでは」と指摘している。
(『ABEMAヒルズ』より)
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