【写真・画像】「AI審判」が選手のレベルアップに貢献?人間では判別不能な超微差をチェック 課題だった“採点競技”でも…テクノロジーの現在地は 1枚目
【映像】一瞬の1センチも見逃さない!高性能「AI審判」が検知した瞬間

 今年7月下旬から8月上旬にかけて行われたパリ五輪で、日本は海外開催としては最多となる45個のメダルを獲得、国内が大いに賑わった。その裏で議論を呼んだのが、審判による「誤審」だ。バスケットボールや柔道など、日本でも注目度が高かった競技で騒動が起きる中、同時に「AI審判」の導入についても、さらに関心が高まっている。既に複数の競技ではAI審判が積極的に導入されているが、単にプレーをジャッジするだけでなく、選手が練習に取り入れ技術を向上させるなど、競技のレベルアップにも貢献している。

【映像】一瞬の1センチも見逃さない!高性能「AI審判」が検知した瞬間

 AIと人間の関係などを研究する社会学者の塚越健司氏は「最近のスポーツだと、技の精度が非常に高くなっていたり、技が速かったりするので、人間の目で追いつくのは難しくなっている。審判の負担を減らす意味でも、AIを導入するというのは非常に求められること」と述べた。フィジカル、テクニックの向上により、人間の審判が視覚や聴覚に頼ってジャッジする限界も近づいており、これを補うのがテクノロジーということだ。

 日本で「AI審判」と聞けば野球やサッカーなどを連想する人も多い中、導入されている競技は他にもある。国際体操連盟と富士通が共同で開発した「Judging Support System(JSS)」は、2019年に一部の種目で用いられ、2023年の世界選手権大会では全種目で導入。採点型競技での「AI審判」は世界初となった。

 たとえば体操の女子種目である平均台で「交差輪とび」という技がある。後ろ足が頭頂部より低いと、技として認定されないのが、AIであればこれが瞬時にジャッジできる。『ABEMA Prime』の取材時、選手が挑戦した映像を確認したところ、わずかに足が1センチ届かず技として認定されなかった。選手がジャンプし足をあげるのはほんの一瞬。その中での1センチを人間の目で捉えるのは不可能だ。このAIには1500もの技を覚えさせ、わずかな違いも瞬時に見極める。JSS開発プロジェクトリーダーの藤原英則さんは「審判業務が大変だというところから何か解決出来ないかと始めた」ところ、国際審判員と同じ基準を持っているシステムということで「実際に選手がシステムを使って普段からトレーニングしたいという意見も出てきた」と、試合会場以外での活用もあるそうだ。

 「イメージ」による採点も、AIを使えばクリアできるという。スポーツAIの専門家である名古屋大学・大学院の藤井慶輔准教授は「AIなら、特定の国・選手の『この人が強い・うまい』というバイアスをなるべくなくした公平な審判ができる。また、判断の根拠を明確に出すことができる」。さらに将来的には「AIがみんな使えるとなった時に(スポーツは)複雑なルールがある場合が多いが、AIが説明してくれるようになれば、初心者でもスポーツを楽しめるといったメリットもある」と今後の展望を語った。人間の感覚、場合によっては審判の主観が入るとして物議を醸すことも多い採点競技だが、現在はフィギュアスケートのAI審判を開発中で、近い将来の実用が期待されている。
(『ABEMA Prime』より)

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