先週ある民宿が投稿した「当館ではタメ口での問合せの場合、回答はもれなく『満室』となります。来て欲しくないですから」とのXポストが議論となった。このポストに対しては、「何度も嫌な目に遭ったんだ」「客を選んでいい」「タメ口の人はカスハラの確率が高い」と理解や賛同の声が出た。
コミュニケーション心理学が専門の藤田尚弓氏は、「タメ口には人間関係、心理的距離を近づける効果がある」と解説する。上手な使い方は、「美味しい!」「なんだっけ?」など、独り言のようなフレーズにまぜて、少しずつ敬語を崩すこと。これは客と店員の関係でも有効だが、横柄な態度などは問題外だ。
『ABEMA Prime』では、カスハラ客に悩む店員や、うまくタメ口を使って昇進した人物とともに、「タメ口」のメリット・デメリットを議論した。
■カスハラ臭漂う“タメ口”客に店員「お客様は神様だろうと言われた」
ホームセンターに勤務する、阿修羅(あしゅら)サラリーマンさんは、お客さんのタメ口に怒りを覚えている。店内で「おい、○○どこだよ」と手をたたいて店員を呼ぶ客や、「何だよ、お前。わかんねーのかよ。使えねぇな」と言い捨てる客などが、その例だ。
阿修羅さんは「高圧的なタメ口で問い合わせる人が結構いる。手をたたく人は、高圧的な人が多い印象だ。特定の職人から『使えねぇな』と言われることもあるが、ホームセンターは売り場も多く、全ての知識を身につけるのは難しい」と語る。
そうした客を前にした時には、「普通に対応しているつもりだが、顔に出ている時もある」。内心は「店員と客の立場だが、言ってしまえば他人。気持ちのいい態度ではない」と感じている。
客からは「買ってやってるんだぞ」「お客様は神様だろう」などと言われたこともあり、「店員を見下している部分はある」と察する。とはいえ店では、店員には「丁寧に接客するように」と言うが、客に対しては「なかなか言うのは難しい」のが現状だ。
コラムニストの河崎環氏は、阿修羅さんのケースは「タメ口」そのものよりも、「精神的な危害を加えようとする意図」を問題視する。「民度の低い、カスハラの意図に満ちた客が増えているのだろう」。
■タメ口を使いこなして出世「周りが堅い時ほど使っている」
会社員の黄門様は、「タメ口」がむしろ昇進に直結した。「周りが敬語で堅ければ堅いほど、タメ口が効果を発揮して、人の懐に切り込める」との持論を語る一方で、「今は30代だから許されている。50歳までタメ口を使うのは品がない」とも話す。
大事なのは「相手に興味を持つあまり、思わずタメ口になった」という流れだ。「文字数が多いから敬語はタイパが悪い」として、服装や髪型も軽くして相乗効果を狙う。タメ口で怒られることを恐れず、「相手の怒りは自分への興味の裏返し」と感じるようにして、勝負の時こそタメ口を駆使する。
年功序列の企業に勤める経験から、「周りが堅い時ほど、タメ口を使う。チャラめの見た目で、停滞している時にズバッと切り込む。それでツボに入って、人脈を築き、成果を上げて、昇進した」と説明する。
タメ口を使う相手は選ぶ。「怒られたら怒られたでチャンス。自分に興味がある証拠だから、違うアプローチを探ればいい。最初から敬語だと壁ができて、そこから先に進まない」。しかし、使える年齢には限度があるという。「50、60代になってのタメ口は、上から目線になってよくない。自分はタメ口一本やりで昇進してきたから、20年後は心配だ」。
■うまく使えば人間関係もアップ!?専門家「相手を敬う態度があればタメ口も失礼じゃない」
藤田氏によると、タメ口の境界線は、時代とともに移り変わっていて難しい。上司と部下の間柄でも、ハラスメントの観点では「上司も部下でもちゃんと敬語を使いましょう」と説くが、風通しの良い会社という観点では「タメ口で話せる人間関係を作りましょう」となる。対等な立場でも敬語という時代に“息苦しさ”を感じる声もあり、なかなかメリットが認識されていないのが現状だ。
「パワハラ研修で『丁寧に話しましょう』と教えた会社から、揺り戻しで『コミュニケーションを円滑にする方法はないか』と相談される」と、現場の混乱も紹介する。両者のグラデーションにより、心の距離を縮める上で、黄門様のアプローチは「ある意味当たっている」と指摘する。「言葉以外のところでは、敬意を示しているはずだ。相手を敬っている態度があれば、タメ口でも失礼ではない」と使い方次第で武器になるとした。
(『ABEMA Prime』より)
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