見守る棋士たちもびっくりの超・長手数による大激戦が誕生した。将棋界の早指し団体戦「ABEMAトーナメント2024」本戦トーナメント決勝、チーム永瀬 対 チーム稲葉の模様が9月14日に放送された。この第2局は、大会最多勝を争っていたチーム永瀬・永瀬拓矢九段(31)とチーム稲葉・藤本渚五段(19)の直接対決。好勝負必至と予想された一局は、期待通りの熱戦になると、なんと両者ともに入玉を果たし持将棋・指し直しに。手数も300手に迫る293手に達し、控室にいた棋士からは「前代未聞の長手数でしょ」と驚きの声が飛んだ。
今大会、準決勝までの個人成績は永瀬九段が10勝1敗、藤本五段が9勝3敗。決勝での結果が、それぞれ最多勝、最多対局賞に絡むと見られていたところ、早々に第2局から直接対決が実現。第1局はチーム永瀬が勝利していたところ、2人の対局が優勝の行方も左右するほど、いきなり見せ場がやってきた。
藤本五段の先手番で始まった一局は、藤本五段が得意の雁木に囲うと、永瀬九段も同じく雁木で、相雁木の出だしに。序盤はやはり得意戦法ということもあってか経験値で勝る藤本五段がリード。中盤以降も永瀬九段の攻めに苦労しつつ、なんとか優勢のまま終盤へと進めていった。ABEMAの「SHOGI AI」も一時は藤本五段の勝率が90%前後を示す時もあった。
ところが、ここであっさりと土俵を割らないのが永瀬九段。追い詰められるほどに好手を連発して劣勢からの脱却を狙うと、気がつけば両者の玉は上部に脱出。さらにお互い、自玉をしっかりと守りきり入玉を果たすと、絶対に逆転がないようにと両者の玉の周りには、大量の「と金」が配置されるという珍しい盤面ができあがった。
最終的には永瀬九段の提案から持将棋が成立。公式戦でも千日手や持将棋が多い永瀬九段らしい結末を迎えたが、成立するまでにかかった手数は実に293手。チーム永瀬の控室にいた増田康宏八段(26)が「すごいなあ。前代未聞の手数じゃん」と苦笑いすると、チーム稲葉の控室では、稲葉陽八段(36)も「はははは。293手!いやー」と大興奮だった。
◆ABEMAトーナメント2024 第1、2回が個人戦、第3回から団体戦になり今回が7回目の開催。ドラフト会議にリーダー棋士11人が参加し、2人ずつを指名、3人1組のチームを作る。残り1チームは指名漏れした棋士が3つに分かれたトーナメントを実施し、勝ち抜いた3人が「エントリーチーム」として参加、全12チームで行われる。予選リーグは3チームずつ4リーグに分かれ、上位2チームが本戦トーナメントに進出する。試合は全て5本先取の9本勝負で行われ、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)