石破茂新総裁が10月27日に行うと表明した「解散総選挙」。解散は総理の専権事項とされるが、その根拠とされるのが憲法第69条で「内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、10日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。」とされている。
また、解散をめぐって時の総理たちがこぞって口にするのが「国民の信を問う」という発言だ。なぜ議会で不信任決議案が可決されてもないのに、わざわざみずからにとっても自分の党にとっても危険とも言える解散に踏み切るのか。
法政大学大学院の白鳥浩教授は「政治にひとつのダイナミズム(活力)を与える。経験則として新しい総理ができたときには、あるいは新しい内閣が組閣されたときには、国民の期待感ということで支持率が20パーセントくらい上がることが多い。いわゆる“ご祝儀相場”」と、そのメリットについて語り「支持率が高いときに解散を打つ。自分の政権を延命させていくための一つの装置」と解説した。
過去の解散総選挙で「危険な賭け」に出たのが2012年11月、当時与党だった民主党で、総理大臣であった野田佳彦氏だ。野党自民党・安倍総裁との当選同期対決で突如解散を明言した。
当時、消費増税を柱とする社会保障と税の一体関連法案が民主・自民・公明3党で合意。しかし民主党からの離党者も出て支持率も低下。「野田おろし」も出始め国民に信を問う必要があった。解散し選挙に突入したが、結果は自民が294議席、民主が57議席と惨敗。政権を自民に取り返され、野田氏は総理だけでなく代表の座も失った。
白鳥氏は野田氏の判断について「あの状況の中で場合によっては解散の時期を探っても良かった。より多く負けない時期を選んだ。これよりもっと持っていくと民主党が負けていく。負けの少ない時を選んで、破れかぶれ、一か八か。政権を失ってしまうという中で、活路を見出そうとしていた」と分析した。
党内からの反発をも解散で乗り切ったケースもある。2005年の小泉純一郎総理の「郵政解散」だ。当時国営だった郵政3事業を民営化するとした小泉総理の「郵政民営化法案」に対し、与野党が反発。大量の造反者を小泉総理は「抵抗勢力」と呼び党内は大荒れとなった。小泉総理は党内の抵抗勢力と呼ぶ37人の候補者に対抗馬を当てた。結果は自民の圧勝で、野党民主党は公示前から64議席を減らす惨敗だった。
白鳥氏は勝因について「最終的には、時の総理の国民に向けたアピールが功を奏して小泉総理が勝利をおさめた」と解説した。
実は巧みに解散を発動することで強固な政権を作り上げたのが安倍晋三元総理だ。総理在任およそ8年で2度「伝家の宝刀」を抜いているが、安倍氏の巧みさが際立ったのが。2017年の「国難突破解散」だった。
当時安倍政権はモリカケ問題で支持率が低下。しかし一方の野党民進党も7月の東京都議選の敗北を受けて蓮舫代表が辞任。前原誠司代表があとを継いだが、所属議員の不倫疑惑や相次ぐ離党で大混乱に陥っていた。敵のスキャンダルで支持率が回復基調にあった安倍総理は、これをチャンスと判断。一発逆転を狙って解散を決意した。
白鳥氏は「当時は多くの政治ジャーナリストも研究者も解散総選挙は早期にはないのではないか、という話があった。当時の安倍総理の勝負勘は卓越したものがあって、野党のほころびが見えそうなときに解散を打ってしまう」と、安倍氏の手腕を評価した。
いったいなぜ議席を減らすリスクもある解散を選ぶのか。「自民党員の中だけで、内々で選ばれた人。つまりそこでは政権の正統性というのが必ずしも担保されていない。いくつかの問題、例えば政治とカネの問題、旧統一教会の問題などいろいろあるが、そういった問題を国民の信を問うということによって乗り越えていく」と必要性について語り「自民党の議員が数を減じるとしても、自民党と公明党でとりあえず過半数以上を取っていれば『選挙には勝った』『国民の信を得た』となる」と説明した。
(『ABEMA的ニュースショー』より)
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