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【映像】最低賃金 上位5・下位6都道府県
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 衆院選の争点にもなっている「賃上げ」。多くの党が最低賃金を1500円に引き上げると掲げているが、これをめぐる経済同友会・新浪剛史代表幹事の「払えない企業はダメ」「払わない経営者は失格」との発言が話題になった。「できない企業は退出する。払える企業に移るほうが、間違いなく人々の生活は上がる」として、政府目標よりも早い「3年以内の1500円実現」を要望している。

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 一方で、賃上げをめぐっては度々、「中小企業は潰れろと」「働き口を無くす気か」などの悲鳴が上がる。22日の『ABEMA Prime』では、エコノミストと中小企業の経営者とともに「最低賃金1500円」の実現性を考えた。

■エコノミスト「最低賃金アップは賃上げ政策ではない」

 野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏は、急速な賃上げには弊害があると指摘する。「数年先なのか、10年、20年先なのか。普通の賃金は企業のペースで上げていくが、最低賃金は政府が一律に上げる。新浪さんが言う“3年で1500円”には毎年10%以上の賃上げが必要で、物価上昇率が2%の今は無理だ」。

衆院選 最低賃金などの公約
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 また、木内氏は「最低賃金アップは賃上げ政策ではない」と主張。「最低賃金は、低い水準で働く人が生活に困らないように、格差が広がらないように社会政策として決めているもの。それを全体の底上げに使うのはおかしな話。賃金や物価がどれぐらい上がったかを見てから決めていくのが正しい順番だ」とする。1500円という設定についても、「全国平均1000円が達成されたから、次の目標として500円刻みで言っているだけ」との見方を示した。

 ジャーナリストの堀潤氏は、衆院選候補者への質疑応答を引き合いに、「『自治体ごとに家賃や生活水準、産業構造が違う中で、どうやって一斉に1500円に上げるのか?』と聞いて、まともに答えた候補者はいなかった。やはりテクニカルな問題として難しいということだ。そこの政治家の解像度が荒すぎるのが、余計な議論を呼んでいる」と指摘した。

■最低賃金1500円「今のままだと無理」 中小企業のリアル

 熊本市北区のタケモトデンキは、従業員15人で正社員13人、パート2人(最低時給952円)の企業。住宅・企業の太陽光発電、蓄電池などの電気工事業に加えて、2019年には一般不動産売買仲介やリノベ事業などの不動産事業を開設した。売上を増やし、直近2年で平均賃金は10%アップ。建設業界でありながら土曜休日を増やすなど、経営努力を続けている。

タケモトデンキの収支(竹本雄一代表、右下)
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 代表の竹本雄一氏は、新浪氏の発言を厳しいとしつつ、「不可能とは言いたくないので、可能にするための努力を考えている」と語る。実際に1500円を実現するためには、「今のままでは無理だ。最低賃金の人だけではなく、全体の賃金も上げなくてはいけない。10人そこそこの会社だが、賃金だけで年間1200万円が必要。粗利の1200万円も考えると、売上を最低2400万円は上げる必要がある」という。

 また、社会保険と兼ね合いも発生する。「賃金を1500円に上げるとして、パートさんからは『年間106万円の壁を越えたら困る。時給を上げないで』と言われる。変な構造だ」と訴える。

 では、どう賃金を上げていけばいいのか。「経済が成長し、みんなの購買意欲も連動しているならいいが、そうはなっていない。1000円で売っていたものを『1500円で買ってもいいよ』と思わせる経済状態でないと、なかなか難しいのではないか」と述べた。

■田端信太郎「日本は企業が潰れることをタブー視しすぎ」

 新浪氏の発言は、決して「中小企業を倒産させよう」という主張ではない。提案しているのは、賃上げ可能な“できる経営者”の元に人を集める「合従連衡(がっしょうれんこう)」だ。「今のままだと、できる経営者もできない経営者も一緒になる。これで中小企業は良くなるわけがない」とも述べている。

新浪氏が提案「合従連衡」
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 アクティビスト個人投資家の田端信太郎氏は、「コストコの時給は1500円ぐらいだが、1人当たりの生産性が高いから払うことができる。コストコが進出すると地場スーパーが困ると言うが、消費者は安い商品を買え、労働者としても高時給の職場が増える。新浪氏が言ったのは、そういう事ではないか」「日本は企業が潰れることをタブー視しすぎている。企業がなくなっても、設備や労働者がなくなるわけではない。吸収合併や機械の売却などで、より優れた経営のほうに労働力が移動するのは、経済論として理解できる」と話す。

 堀氏はこれに「地域ファイナンス」の観点を加え、「経営者が私財を担保に入れて、資金を借り入れる仕組みでないと、これまで地域経済が回らなかった。地域VCや地銀の役割の見直し、個人が資金調達できるセーフティネットを作るといったファイナンスの話が欠落している」と指摘。

 木内氏は、「問題になるのは小売業や飲食業など、非正規が多い一部の業種だ。たしかにそれらで最低賃金が急激に上がると成り立たない」とする一方で、「多くの中小企業は最低賃金以上の水準で働いていて、そうした企業を強くするには別の手段を考えるべきだ」と提言する。

 必要なのは、市場全体が成長すること。「物価の上昇に賃金が追いつかないのが問題だったが、企業の収益が悪化した時、人件費が上がりすぎていて、人を削減する、失業者が増えるという別の問題も起きる。長い目で見れば、賃金の上昇はパイの切り方の話で、それを動かすのはそれほど重要ではない。必要なのは、全体的に成長が促される政策。今回の選挙も目先の最低賃金の話をしているが、10、20年先の日本経済をどう強くするかの議論がほとんどない」との認識を示した。(『ABEMA Prime』より)

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