■赤字は悪?「短い期間で評価するものでもない」
では、この大赤字は“悪”なのか。スタートアップ投資に精通するシニフィアン共同代表の村上誠典氏は、安易に赤字=ネガティブなものとして報じることを疑問視する。「まずAIという取り組み自体、1年とか短い期間で評価するものではない。おそらくAIの開発は儲かる・儲からない、発展する・発展しないに関わらず、人類のためにやり続けるもの。今の売り上げが何億ドル、赤字が何億ドルというのを見ること自体が、本来やるべき時間軸からしたら短く切りすぎている。人類全体で見て付加価値のある、このAIという産業に大きな投資をしている。生み出す付加価値の量についての評価はまだ早い」。また、赤字を回収し、黒字化に転ずることを目指すという風潮そのものにも、首をひねる。「赤字が続くからといっても、たぶん止めずにやり続ける。巨額の投資という最大のメリットは、研究・開発をする人を囲い込めること」と加えた。
また文化通訳でシンガソングライターのネルソン・バビンコイ氏は、数々の生成AIが今後の新たな付加価値を生むプラットフォームになるものだと信じて疑わない。「長い目でプラットフォームを作っていて、今みんなが使っているスマートフォンのOSのようなもの。アップルも、以前から儲かってはいたがApp Storeで一般的な開発者がアプリを誰でも作れるようになって、そのアプリをスマートフォンに乗せることでお金を出して、その利益がどんどん増えた。個人的な感覚かもしれないが、みんなそれぞれAIプラットフォームを作っている。それをベースにいろいろな企業が立ち上がり、サービスを作っていく未来には向かっていると思う」と今後の展望を語った。生成AIそのものが利益を生むのではなく、それを使った新たなサービスが利益を生み、還元されていく。その付加価値を生み出すための先行投資が続いている時期だと述べた。
■「AIの価値が生まれるまでやり続ける」
