今や世界中で毎週2億5000万人が利用する対話型AI「ChatGPT」を運営する、スタートアップ企業「OpenAI」。ニューヨークタイムズによると、今年は37億ドル(約5600億円)を売り上げる見込みだ。さらに今月、1兆円の資金調達を発表。企業評価額は未上場ながら約24兆円にも達するという。
一方、同じくニューヨークタイムズは2024年度に50億ドル(約7700億円)の負債を抱える可能性があるとも報じている。巨額の赤字は研究・開発、サービスの運営などに高いコストがかかっているためで、利益を出さなければ、調達した資金もそのまま負債になると指摘。足元ではOpenAIだけでなく、巨大テック企業なども独自の生成AI開発を進めており、覇権争いは熾烈化している。人類の生活を大きく変えようとしている生成AIの開発が進み、赤字を垂れ流しながら巨額の投資が続いていることについて、『ABEMA Prime』では、大赤字の評価について考えた。
■生成AIの覇権争い…OpenAIに勝ち筋は?
ChatGPTの誕生により、これまで専門家など限られた人々が使うものだった生成AIが、飛躍的に一般にも広がった。世界中で利用者が増えたこともあり、投資額、売り上げの額も増えた。しかし、いまだ黒字化の目途は立たず、赤字が続いているという。2ちゃんねる創設者のひろゆき氏は「累積赤字の回収はもう無理なんじゃないか。人類にとってAIの研究開発がすごく大事なのはその通り。ただマイクロソフトやFacebookなどと競い合った結果、今はそれなりに小さいパソコンレベルでも結構いい成績を出すようになった。GPUがなくてもCPUでそこそこできる、そこまで設備投資がいらないものでもいいとなると、ChatGPTをすべて有料にしたとしても、無料のものに流れてしまう」と指摘。後発のAIが、利用するにもハードなスペックを必要とせず、パソコンやスマホのレベルで使えるもので、一般人が満足するのであれば、そちらに利用者がどんどん流れると指摘。
またChatGPTは、各種サービスのバックエンド(ユーザーからは見えないインフラ)であり「ChatGPTからFacebookに切り替わっても、ユーザー体験はほぼ変わらない。研究機関と一部の人たちが使う高級なスーパーコンピューターみたいなもので、すごいことをする場合に払うかもしれないが、一般の人たちは別にもうそのレベルの性能でいいよねという感じで、大衆向けの売り上げは上がらないのでは」と指摘した。
ひろゆき氏が、一般的な利用者から売り上げが出ないという理由は、「ChatGPT 4」の性能の高さだ。「もうChatGPT 4の時点で、人類が必要とするレベルを超えているのではないか。もうこの時点でめちゃくちゃ頭がいいので、それ以上頭をよくしても、人間は性能差がわからない。100メートル走で9秒9と9秒98の違いは、ほぼ一緒」と例えた。
■赤字は悪?「短い期間で評価するものでもない」
では、この大赤字は“悪”なのか。スタートアップ投資に精通するシニフィアン共同代表の村上誠典氏は、安易に赤字=ネガティブなものとして報じることを疑問視する。「まずAIという取り組み自体、1年とか短い期間で評価するものではない。おそらくAIの開発は儲かる・儲からない、発展する・発展しないに関わらず、人類のためにやり続けるもの。今の売り上げが何億ドル、赤字が何億ドルというのを見ること自体が、本来やるべき時間軸からしたら短く切りすぎている。人類全体で見て付加価値のある、このAIという産業に大きな投資をしている。生み出す付加価値の量についての評価はまだ早い」。また、赤字を回収し、黒字化に転ずることを目指すという風潮そのものにも、首をひねる。「赤字が続くからといっても、たぶん止めずにやり続ける。巨額の投資という最大のメリットは、研究・開発をする人を囲い込めること」と加えた。
また文化通訳でシンガソングライターのネルソン・バビンコイ氏は、数々の生成AIが今後の新たな付加価値を生むプラットフォームになるものだと信じて疑わない。「長い目でプラットフォームを作っていて、今みんなが使っているスマートフォンのOSのようなもの。アップルも、以前から儲かってはいたがApp Storeで一般的な開発者がアプリを誰でも作れるようになって、そのアプリをスマートフォンに乗せることでお金を出して、その利益がどんどん増えた。個人的な感覚かもしれないが、みんなそれぞれAIプラットフォームを作っている。それをベースにいろいろな企業が立ち上がり、サービスを作っていく未来には向かっていると思う」と今後の展望を語った。生成AIそのものが利益を生むのではなく、それを使った新たなサービスが利益を生み、還元されていく。その付加価値を生み出すための先行投資が続いている時期だと述べた。
■「AIの価値が生まれるまでやり続ける」
人類におけるメリットを考えた場合、生成AIに向けた投資は、目先の赤字とは関係なく進んでいくものという意見が揃う中、村上氏は改めて、一企業に限定した見方の問題点を示した。「一企業の収益性とか企業価値がどうなるかという判断をすると、たぶんおかしな話になる。場合によっては合従連衡が起きるかもしれないし、場合によっては国を巻き込んでいくかもしれない。今、頑張って開発している人たちが投資を回収できるかと言えば難しいかもしれない。OpenAIが企業単位で価値を生み出せるかというよりは、全体で投資したもので最終的に人類が何らかの利潤を得た時に、そのパイの取り合いで今の人たちが取るとも限らない」と述べた。
さらには「何兆円とかけて投資していって、付加価値が出るまでやり続ける。AIが価値を生むまでやる、そういう覚悟でやっている。確実に儲かるということを見据えてやっていない。今やっていることが非効率である可能性もあるが、それがわからないので最も現実的に考える効率的なやり方をしているはず」と繰り返した。これにはひろゆき氏も「Facebook、マイクロソフト、Googleにしても、AIに投資をしていないことの方がマイナスだ。とりあえず1000億円、数千億突っ込んでいる。なんとかなると思うという期待なので。そこを削減したと言ったら、もっと株価が下がる」と述べた。
(『ABEMA Prime』より)
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