衆議院選挙が幕を閉じ、玉木雄一郎氏が代表を務める「国民民主党」が注目を集めている。28議席を獲得して、選挙前の7議席から4倍の28議席になった。一方で自民・公明の与党は過半数割れ。キャスティングボートを握った国民民主党は、与野党を問わず、自らの政策を飲ませられる存在となった。
国民民主党が全力で押しているのが、「103万円の壁」の見直しだ。年収が103万円を超えると、現状では所得税の課税や、学生のように扶養されている場合には、親の税金が上がる場合がある。「全くやらないなら、協力できない」と語る国民民主党は、今後の政局にどんな影響を与えるのか。『ABEMA Prime』で考えた。
■7議席→28議席 国民民主党が大躍進した理由とは
元テレビ朝日・政治部デスクで、政治ジャーナリストの細川隆三氏は「ここまで増やすかと、びっくりした」と語る。「多くの人が『これどうなの?』と思っている身近な問題を、具体的に訴えたからウケたのではないか」。
少数与党となった自公は「協力してもらわないと、何も法案が通らない」現状だ。「予算は衆議院で可決されると、30日で自然成立する。予算が通るように目を付けたのが、国民民主党の28議席だ」。しかし、まだ信頼関係は築けていない。「国民側も政策協議で要求が実現するか、見極めなければならない。仮に連立に入れば、石破自民と同列に扱われる。自民党が政策を飲んでくれるのか、見ていくのだろう」と予測する。
石破政権にとって、直近の課題は経済政策だ。「石破氏は、特別国会をやって、いったん国会を閉めて、臨時国会を開き、年内に補正予算を成立させると言っている。その後も来年度予算に向けた税制改正を議論しなければいけない。国民民主党が主張を通そうとする場面は、これから何度も出てくるのではないか」。
■学生部の提案がきっかけ 大注目「103万円の壁」は破れるか
国民民主党・学生部の前代表、井之口満耶氏は、衆院選の演説で「103万円の壁」について話したところ、聴衆から拍手を受けたという。「学生は103万円の壁に苦しめられている人が多い。私自身も大学生で、アルバイトをしているが、9月以降は超えてしまう」。
国民民主党は、所得・住民税の基礎控除を103万円から178万円に引き上げる政策を掲げている。「これは学生部が党に政策提言をして盛り込まれた。牛丼チェーンで働く大学生の学生部員が、『困るからどうにか引き上げてくれないか』と提案して、賃金上昇率に合わせた控除額が計算された」と振り返る。
玉木代表の主張は「178万円に引き上げることで、働ける人が増え、国民の手取りが増える」といった内容だとして、井之口氏は「消費が活性化され、企業の業績も少しずつ上がり、長期的に見れば、税収減は問題ではない」との見解を示す。
作家でジャーナリストの佐々木俊尚氏は、「キャスティングボートを握った途端に、『税収減が7.6兆円』と報じられた。明らかに財務省がレクをして、つぶそうと躍起になっている」と指摘する。「高所得者ほど減税額が増えるのは事実だが、主婦や高齢者、学生などの若者が働くようになれば、経済は成長する。控除引き上げによる税収減と同時に、経済効果による税収増を議論して、初めてプラスマイナスを考えられる。財務省のレクをメディアが垂れ流している状況はよくない」。
細川氏は「財務省は税収が減ると大騒ぎする」と説明する。「今までは自民党が財務省の言いなりになることも結構あった。しかし少数与党になって、言いなりだけでは、国民民主党と話ができない。少数政権になることで、国民生活にとって良い方向になる一面もある」。
■単純な「与党VS野党」構図にこだわる必要なし?少数与党だからこそ生きることとは
佐々木氏は「立憲民主や社民、共産とは安全保障政策などが異なり、野党で一致することはあり得ない」と考えている。「与野党対決や二大政党制の幻想に、とらわれすぎている。世界では少数与党が政権を担い、政策に合わせて調整する形は珍しくない。ベルギーやオランダ、フランスは、大体が少数与党だ」と説明する。
そうした国々では、「おおむね、うまく行っている」そうだ。「“与党VS野党”のような二元論から脱して、イシューごとに『自民は賛成しているが、国民民主は反対している』など、ひとつずつ見ていく習慣に変えていかなければいけない」と提案し、「古い民主主義に引きずられている感があるなか、国民民主のやり方は画期的だ。ぜひ与党入りせずに貫いてほしい」とエールを送る。
井之口氏は「国民民主党は『対決より解決』を言い続けている。協力するところは協力するスタンスを崩してしまえば、今回投票した方への裏切りになる。『裏切られた』と感じさせれば、政治不信につながる。いままで通りのスタンスを貫いてほしい」と語った。
(『ABEMA Prime』より)
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