■「オタクの世界だから、本当にこだわるからこそファンがつく」

業界構造
拡大する

 無償修正発注について、“大手”の影響はあるのか。九条氏は「自分もカバーからなら考えてしまうかもしれない」というほど、大きな実績・名刺になると語る。また、新業界のため、契約・法律面で手探りのクリエイターも存在するという。金井氏は「大企業→大量のフリーランス」という特有の契約状況と、「好きだから仕事を受けている」という人もいると話す。

 九条氏は「この業界で“事前ヒアリング(契約の取り決め)”はあまり聞かない」と商慣習を明かす。「言っても伝わらない気がする。イラストを見て、『この動きが似合うだろう』と考える。私は制作途中の動画を見せて、納品前の段階で相談する」。修正を“3回まで無償”としたのは、同業者からのアドバイスだった。「制作期間約1週間のモデリング作業で、1作品の価格は20万円に設定している。修正については3回までは無償で行う。それ以降は1回あたり5000円としている。中には1日で終わる修正もあれば、数日かかる場合もある」。

 金井氏は「後から対応可能な修正もあれば、内容は軽くても、手順を戻す必要があると大変になる。“情報の非対称性”があって、発注者と受注者の『これはいける』『難しい』にズレがある」と説明する。

 これらの背景を聞いて、起業家で投資家の成田修造氏は「依頼者がデザイナーでないと、難易度もわからないまま、ざっくりとお願いするのだろう」と考察する。「アニメやゲーム業界に近い。キャラクターとコンテンツ、ストーリーを作るチームがわかれている。依頼者に“作れるスキル”があれば成り立つが、専門集団をコントロールするのは難しい」。

 QYResearch「Vtuberの世界市場レポート2023-2029」によると、世界のVTuberトップ5プレイヤーは、2023年時点でトップがANYCOLOR(にじさんじ)のシェア19.78%。以降はCOVER Group(ホロライブなど)の18.30%、Bilibiliの7.10%、774 incの1.17%、Re:AcTの0.77%と続く。

 成田氏は「オタクの世界だから本当にこだわる。こだわるからこそファンがつく。だからカバーや、にじさんじは支持者も多く、伸びている」としつつ、「巻き込まれるクリエイターさんはかわいそうだなと思うものの、やはり伸びている会社はその分お金も良くて、実績も付く」ような構造があるとの考えを示す。

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