一方で、痛みに耐えられない人の処置として、最近「サイレントマニュピレーション」が注目されている。肩に局所麻酔を打ち、失神するほど動かない肩を、医師の手で強引に動かす。硬くなった関節包を破り、新しい関節包の再生を促すことで、肩の動きを元に戻すのが狙いだ。
この治療を行う、AR-Ex(アレックス)尾山台整形外科(東京・世田谷区)の平田正純医師は「進行してしまうと、なかなか打つ手はない。関節包にいったん破れを作る。関節包は傷が入っても、ちゃんと再生する」と語る。脱臼や骨折、出血、神経まひなどのリスクも、ごくまれにあるが、処置後に毎日リハビリとストレッチを行うと、平均2〜3カ月で元の可動域に戻るという。
重度の五十肩に悩む、元「週刊SPA!」副編集長の田辺健二氏(48)が、実際に施術を受けた。「バットで殴られたぐらいの痛み。半年くらいずっと痛い。コンビニで冷蔵庫を引っ張った瞬間、その場でうずくまる。家のカギを回しただけでも来た」と症状を嘆く。
田辺氏を診た平田氏は「田辺氏は関節の袋が非常に小さくなっている。関節の中には、敏感な神経のセンサーが張り巡らされていて、刺激を受けて痛みとして感じる。関節のスムーズな動きは全く確認できず、末期に近い」と診断する。
施術ではまず、患部に近い左肩の神経に、局所麻酔を注射する。15分ほどたち、完全に感覚がなくなると、医師の手で肩を動かす。関節包が破れるような音もする。麻酔で痛みは感じないが、田辺氏は「あー痛い」と声を漏らし、平田氏は「脳みそがバグる人がいる」と返す。
術後に「複雑骨折したみたいな感じ」だと語った田辺氏は、それから3カ月のリハビリ生活に入った。2日に一度は病院に通い、自宅でも毎日ストレッチを続けた。その成果で、上まで上げられるようになったが、「横はリハビリ中だ」という。
サイレントマニュピレーションは、とくに拘縮期に効果があると、平田氏は説明する。「炎症期は、薬や注射で痛みを和らげて、早く通り越すのが肝要だ」。五十肩は放置すると、「使わないので筋肉が退化する」と警鐘をならす。
原因不明なため、確実な予防策はないとしつつ、「現代人はスマホの使用や、作業姿勢に注意すべき。肩甲骨を正しく使えていない。正しい姿勢を守って、肩周りを動かすことが大事だ」と呼びかけた。
(『ABEMA的ニュースショー』より)
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