■「大きな変化は、有権者の人たちが政策を見るようになった」

小林史明氏
拡大する

 再選後に斎藤氏は、ネットでの支持拡大について、「自然発生的に出てきた草の根、勝手連的な形で、色んな方に応援していただく輪が広がったと感じている」とコメント。対する稲村氏は「何が争点だったのか。斎藤候補と争ったというより、何と向き合っているのか違和感があった」と敗戦の弁を述べた。

 環境副大臣の小林史明衆院議員は、「大きな変化は、有権者が政策を見るようになり、スキャンダルが関係なくなりつつある点だ」と考察する。「現職は実績が評価されるが、稲村営は政策よりも姿勢を論点とした。衆院選でも同じことが起きた。立憲民主党は政治資金問題を声高に言い、自民党も国民の関心事を公約として出せない一方で、国民民主党が『手取りを増やす』と訴えて評価されたのと同じ構図だ」。

 兵庫県内60の投票所で、2723人の有権者が回答したABCの出口調査(11月17日)によると、3年間の斎藤県政について、7割以上が「一定の評価」を下した。支持政党別に見ると、自民支持層の5割弱、維新支持層の5割強、無党派層の5割超となる。また、投票で一番重視したことは、政策や公約が約4割、告発文書問題への対応が約1割だった。

 斎藤氏の実績としては、「知事の給料・期末手当3割、退職手当5割カット」「知事公用車をワンボックスカーに変更」「1000億円にのぼる県庁舎建替計画の凍結」「県職員OBの65歳以上の天下り廃止」「兵庫県立大学の授業料無償化」「森林事業など約1500億円の隠れ借金問題の見える化」などがある。

 新田氏は、8月後半から「パワハラや“おねだり”報道に疑問を持った人が、斎藤氏の実績に触れて、『果たして極悪知事なのか』と言い始めた」と説明する。「百条委員会で報じられていない内容も、SNSで切り抜き動画が拡散する。1日数時間の県議会中継から、数分を切り取って、いちいち発言を探す手間が省ける」。そして、7割以上が「一定の評価」をしている調査結果から、「斎藤氏に投票しなかった人をふくめて、ここまでの成果は支持した可能性がある」と語る。

 SNS上では稲村氏についてのデマも拡散された。「(稲村氏が当選したら)外国人参政権が成立する」「1000億円の豪華県庁が作られる」などの話から、「尼崎市長時代に退職金5倍もらっていた」「緑の党の共同代表だった」といったものまであったが、いずれも本人が否定している。

 松本氏は、自身も加わった市長22人による稲村氏の支持表明について、「結果論としては逆に働いた」と反省する。「稲村陣営のアカウントが凍結され、積極的な情報発信ができなかった。『緑の党に所属していた』や『極左』などのデマが出回り、焦りから各市長が声明を出す動きになった」と説明した。

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