タイトル初挑戦で「倒せない」の声を完全に一蹴する衝撃の1ラウンドKO。兄の天心から弟の龍心へ…「キックボクシング王者・那須川」物語の“シーズン2”が幕を開けると、キック無敗を誇った兄の天心もリングサイドで歓喜の様子を見せた。
11月23日に後楽園ホールで行われた「RISE183」で、RISEフライ級王者・数島大陸(及川道場)に那須川龍心(TEAM TEPPEN)が挑戦。タイトル初挑戦ながら1ラウンドKO勝利。観戦していた兄の那須川天心もSNSで試合後「キックボクシングを任せた」と、喜びとともにエールを贈った。
キック戦績は12戦10勝2敗とタイトル戦線に手が届くところまできた龍心。一方、前回念願のフライ級王者を戴冠した21歳・数島も「チヤホヤされてきた奴には負けたくない」と互いの譲れない気持ちがぶつかり合うタイトル戦となった。
陣営全員で大きな輪となって「絶対勝つのでオレに力をください!」と雄叫びを上げリングに向かった龍心。対する数島陣営はトレインで登場すると気合の円陣で王者を送り出す。コール時には大胆不敵に天心のトレードマークの“トリケラトプス拳”の構えで挑発、試合前から心理戦は始まっている。
両者拳を合わせ距離をはかる静かな立ち上がり。龍心が早い左ストレートを伸ばすと、数島は右で素早く反応するもバッティング。試合再開後、左ローで蹴り上げる王者に対し、龍心は一度下がるがすぐにカウンター気味の右で応戦、数島も右フックを返す。
均衡を破ったのは龍心だ。積極的に前に出て右ストレートからワンツーと速さで数島を上回ると、その後も数島の前後の動きを先回りするように龍心のパンチが当たり始める。
王者数島にも打開力はある。得意の左ストレートを見せつつ左ローと攻撃を散らし反撃に出るが、龍心もその場で足を止めての打ち合いに応じる。数島の左を被弾し一度は仰け反る龍心だが、さらなる追撃の右をカウンターで同士打ちにすると右ストレート、数島も右フックで応戦するが、龍心がテンプルへのフック。これが居合のような鋭いクロスカウンターとなり、数島が前のめりに崩れ落ちた。
カウントを聞きながら真っ直ぐ前を向き落ち着いた様子の王者だが、ダメージは大きく中腰から後方に体勢を崩すと立ち上がりながらフラフラと後退。見た目以上の大ダメージに、レフェリーが即試合を止めた。
ABEMAの解説・一馬も「誰も予想していなかった」とよもやのKO決着にコメント。ファンも「これは読めなかった」「これは文句なしで王者!」とどよめく。さらに一馬は「一番ないと思われたKOと勝ち」と漏らしたが、紛れもなく難敵・数島相手の下馬評を踏まえての本音だろう。
RISEではデビュー2戦目で敗戦を経験。タイトルまであと一歩という試合でまた敗戦と、無敗でキックボクシングの世界を去った兄・天心のような順風満帆なキャリアとは行かなかった龍心だが、着実に勝利を重ねて破竹の8連勝で念願のRISE王者に上り詰めた。
マイクでは「倒せない、倒せないと言われてきて、マジで見返してやろうと思って、ここまで本当にたくさん練習してきました」とこれまでの想いを吐き出すように吐露するも「僕がキックボクシングを盛り上げていける存在になれるように頑張っていく」と力強く宣言、さらに1カ月を切っている12月の「RISE WORLD SERIES 2024 FINAL」への参戦も直訴した。
リング下で観戦していたプロボクサーの兄・那須川天心も弟の圧巻の勝利にガッツポーズを見せると、そわそわと落ち着かない様子でスマホを傾ける場面も。試合後も古巣のリングに上がることはなく観客席で静かに新王者誕生を見守った。試合後SNSには「RISEフライ級チャンピオン那須川龍心キックボクシングを任せた」と綴り弟にエールを贈っていた。