■日本における「通信傍受」とは ネット・アプリにはほぼ無力?

日本の「通信傍受」
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 星氏は「通信傍受法が成立した1999年時点では、SNSも普及しておらず、電話の傍受を前提にしていた」と振り返る。その後に法改正も行われたが、通話前提は変わらず、「メッセージアプリやIP電話の傍受は、法的に不可能ではないが、手続きの整備が行われていない」と語る。傍受が行われるのは、「一定の組織犯罪」に対してだという。「一番大きいのが薬物取引だ。銃器取引や集団密航、組織的な殺人などの9類型が対象になっている」。

 ネット掲示板「2ちゃんねる」創設者のひろゆき氏は、「世界で一番使われているメッセージアプリのWhatsAppは、エンド・ツー・エンドで通信されているため、傍受しても内容を知ることができない。2位のWeChatは中国なのでわからないが、3位のFacebook Messengerも内容は見られない」として、「プラットフォーム事業者の協力を得られても、エンド・ツー・エンドの通信は、発信者と受信者が暗号化してやりとりするため、事業者が内容を知ることはできない」と解説する。

 星氏は「中身を見る以前に、日本では傍受すら事実上できていない」と現状の課題を話す。「犯罪類型によって異なるが、闇バイトであれば、Xでの募集段階やLINE通話など段階があり、どのフェーズでも対応できない状態は改善すべきだ」。

 近畿大学情報学研究所所長の夏野剛氏は、傍受の程度によっては、「プラットフォーマーが国家権力に屈することになり、そうなればユーザーは傍受されないアプリに移行してしまう」と、根本的な解決は難しいとの懸念を示す。加えて、「海外プラットフォーマーの日本法人は『本社に言って』と言い、日本の警察が本社に捜査協力を要請しても無視される」といった構造もあると指摘した。

■ひろゆき氏「知らない奴からおいしい話があるとかおかしい」
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