■グアムで行われた「解剖ツアー」
まず今回、グアムで行われた解剖研修に臨んだ美容外科医が「新鮮なご遺体を解剖しに行く」などの文言やピース写真などをSNSにアップした件について、高須氏は「やっぱりありえない。献体される方というのは、医学に貢献したいとか、世の中の役に立ちたいという気持ちを持って献体されるわけだ。それに対しては、私どもは誠意を持って解剖させていただくという気持ちでやらないといけない。レジャー気分でピースをしてというのはあり得ない。辞めていただきたい」と苦言を呈した。また後藤氏も「献体というのは本当にかなり神聖なものだし、我々はかなり学ぶことが本当に多い。『ありがとうございます』と言ってやることが本当に常だ。それがこのような形で出てしまったというのは非常に残念だ」と、口を揃えた。
国内では、あまり献体は行われていないのか。高須氏は「『fresh cadaver』といい、日本語なら『新鮮なご遺体』という表現になり、僕らでも普通に使う表現だ。通常、日本の医学部でやる場合は、ホルマリンに漬けたご遺体で解剖させていただく。その場合は筋肉とか血管とか神経が、ちょっとパサパサしている状態だ。fresh cadaverだと血管の中に血液が入っていたり、筋肉もみずみずしくて、生きている人間に近い状態なので、手術のトレーニングをするためだったらfresh cadaverの方がより良いトレーニングができる。fresh cadaverでの解剖でのトレーニングが、なかなか日本では整った環境がなくて、むしろアメリカの方が進んでいる。美容外科業界だと、大体年に1回とか、ハワイとかグアムでツアーを組んでfresh cadaverの解剖をしようというのがある。今回もその一つだ」と説明した。
また、後藤氏は「僕の場合は保険診療の臨床医なので、亡くなった後に病理解剖等、例えば死因の究明だったりとか、いろいろ後学のためにとか、いろいろな理由でお願いするケースだ。なので、今の表現で言うと、おそらく死後間もない方に僕らは立ち会う。自分たちが解剖をやって良い資格がある。なので、僕は立ち会って勉強させてもらうというのが常だ」と加えた。
美容外科医が、献体に触るというのは、なかなか医療に縁がない一般人からすればイメージしにくいところだが、高須氏は「解剖のトレーニングをさせていただいた方が、手術の腕は上達する。僕なんかは、形成外科のトレーニングをして、専門医を取ってから美容の道に進んだ。その専門医の過程で、がんセンターでがん治療をしたりとか、クラニオフェイシャルサージャリーと言って、顔面とか頭蓋骨をいじる形成外科の手術をしている。その時に同時に解剖の勉強をする。今問題になっている直美(ちょくび=直接、美容外科医になるの意)というのは、研修医の2年間を終わってすぐに美容に行くので、そういう形成外科でのトレーニングというのが省略されてしまっている。なので、お亡くなりになったfresh cadaverで勉強させていただくという形で、そういうツアーが結構流行っているという状態だ」と説明した。
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