アメリカのトランプ大統領が、WHO(世界保健機関)からの脱退を表明した。WHOは「遺憾に思う」と、再考を求めている。WHOの予算は、各国の分担金や拠出金で賄われており、トップの拠出国はアメリカだ。脱退により“最大の資金源”を失うことで、今後の活動に懸念が高まっている。
脱退理由について、大統領令では「中国は米国の300%の人口を抱えているが、WHOへの拠出額はアメリカより90%近く少ない」と説明されている。トランプ氏は「中国は14億人で3900万ドル、私たちは5億ドル。ちょっと不公平に感じた」と話す。
さかのぼれば、第1次トランプ政権時の2020年にも、コロナ禍におけるWHOの中国への対応が「不適切」だったと指摘し、「中国はWHOを支配している」と批判していた。トランプ氏の判断は正しいのか。日本や世界に与える影響について、WHO元職員と『ABEMA Prime』で考えた。
■トランプ大統領とWHOの対立
トランプ氏とWHOの対立を振り返る。2020年1月頃のコロナ禍初期、当時のトランプ政権下で、米国による中国への渡航禁止勧告にWHOが“反対”した。WHOは同2月、「渡航を妨げる理由はない。根拠と一貫性のある決定を各国に求める」とコメントしていた。また、中国からの情報収集と提供に時間がかかったことから、同4月にトランプ氏は「WHOは中国の言い分が通る機関で中国寄りだ」として、WHOへの資金拠出を一時停止すると発表した。
元厚労省職員で、WHO職員の経験も持つ、医師の阿部けいし衆院議員(日本維新の会)は、「2020年1月当時、WHO本部でコロナ対応をしていた」と振り返る。「現場で見ると、『本当に中国寄りか?』と感じた。対策本部は当初、20〜30人だったが、アジア人は私1人だった。中国人も韓国人も、東南アジア人もいない。国連組織全体で欧米人が多く、国際政治ではいろんな見方があると感じた」。
WHOなどの国連組織は「株主である主権国家に奉仕する存在」だといい、「あの時一番苦しんでいたのは中国だったので、『中国のため』という思いはあった。しかし2月になると、ダイヤモンド・プリンセス号で日本が大変になった。その時に応じて、フェーズが変わった」と説明。その後は「3月、4月になると、全世界に広がり、一国一国の濃度としては薄まっていったのだろう」と指摘する。
■分担金と拠出金はどう決まる?

