■医師「“紙の保険証は停止だ”とするのはあまりにも強引だった」
在宅医療を中心に診療する医師で、紙の保険証の必要性を訴える木村知氏。「外来と入院、在宅医療を行う地域密着型の診療をしている。発熱外来の患者さんの普及率は25%に近い実感があるが、在宅医療になるとガクンと下がる。400人中10人いないぐらいで、2.5%。ほとんどの方が紙の保険証を使わざるを得ないのが現状だ」と説明。
また、「そもそも法律の立て付けで(マイナ保険証は)義務ではないし、作りたくても作れない人もいる。彼らを置き去りにして“紙の保険証は停止だ”とするのはあまりにも強引だった。システムダウンや災害の時に、紙の健康保険証を持っていなくて診療を諦めてしまう、というのは危険。リスク管理・リスク分散としては紙を永遠に残すべきだ」との考えを述べる。
これにパックンは、「維新の吉村さんが『過剰診療や重複投薬をできる限り防ぐ』と反論したとおり、全て一元化して、マイナ保険証を見れば病歴や治療歴、投薬の履歴がわかると。診断や面倒くさい手続きは半分以下に減ると思う。その将来の目的地には賛同できるのではないか」と投げかける。
木村氏は「政府の説明が誤誘導だ。メリットとして、重複投薬や過剰医療を避ける、とたしかに書いてある。ただ、載せるデータは漏洩した時にセンシティブなもの。今のマイナ保険証は診療には役に立っておらず、お薬手帳に毛が生えたぐらいだ」とした。
それより推進すべきは電子カルテだという。「電子カルテ自体、100%の医療機関で導入されていないし、医療機関ごとのデータも統一されていない。政府のアナウンスは、“マイナ保険証でそれらが連携できる”かのようなニュアンスだが、今はできていない。国はそれを正直に言うべきだ」と促した。
中谷氏は「厚労省はアンフェアな喧伝をしている。河野さんが廃止とする前、元々厚労省は健康保険証とマイナ保険証の併用で医療DXが進められる環境を作ろうとしていた。重複投薬もオンライン資格確認の中で、健康保険証のIDでチェックすることは現実的にできる。重複投薬のコストは2020年度で16億7000万円とされているが、このために数百億円、数千億円を使うのは費用対効果が良くないので、しっかりと考えていかなければならない」と指摘。
セキュリティ面については、「シンガポールで、人口の27.5%の個人情報が流出したことがある。首相のものまで流出して非常に問題になったが、サイバーセキュリティ対策をしっかりやっていかないと、日本も同じ轍を踏むことになる。そこも慎重にやっていく必要がある」との見方を示した。
■パックン「次の制度にリソースを割いたほうが将来的に楽になる」
