■公立高校存続の意義は「教育の多様性」

松野良彦校長
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 一方で、私立高校無償化が一足早く始まった大阪では、生徒が私立高に流れることで、公立高がピンチに陥っているという。大阪府立佐野工科高校では、支援学級に行く層を増加させて、定員割れを回避している。

 同校の松野良彦校長が、公立高校の窮状を訴える。「少子化の影響に加え、これまで私学に行かなかった生徒が、無償化で行くようになっている。その分、公立高校が定員割れすると、教員も削られる。現場が疲弊して、手厚い指導を縮小せざるを得ない状況だ」。

 高校無償化は、実際に少子化対策へつながるのか。斎藤氏は「結婚しない、あるいは子育てを諦める要因として、経済面があるという調査結果は多数ある。子育てや教育に費用がかかる現状があり、教育無償化だけで『子どもを産もう』とはならないが、少子化対策の土台になる重要な政策だ」と語る。

 加えて、「授業料の競争がフラットになれば、私立に入学する可能性のある子が増える。公立も『安いから来てくれる』ではなく、特色を打ち出せるようになると強い。少子化が進み、教育の質も上げないといけないため、競争がプラスに働くようにしないといけない」とした。

 公立高校存続の意義は、どこにあるのか。松野氏は「教育に多様性を求めるのであれば、公立高も残してもらいたい」と考える。「私学ではできない分野」「農業や工業等の実業系、支援系の高校」「集団での学びが困難な生徒の受け入れ」「地域に根付いた学校」「満員電車での通学が嫌な生徒もいる」「大阪では定員内不合格を出さない」「帰国渡日生徒や障がいのある生徒等多様な生徒を受け入れ」といったメリットを挙げて、「高校は公立も私学も、特色のある取り組みを行っている。より教育の多様性を求めるのなら、公立高もしっかり残した方がいい」と話す。

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