■全国に1000万人いるとも…「感覚過敏」とは
推定患者数は1000万人におよぶ、“感覚過敏”とは何なのか。高知大学医学部の高橋秀俊特任教授が監修した説明によると、「視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚などのどれか、または複数が過敏で日常生活に困難がある状態」を指す。先天的なものは、自閉スペクトラム症(ASD)等の発達障害に多いとされる。また、後天的に脳卒中・認知症・てんかん・うつ病等でも起こりうる。
加藤さんの感覚過敏は、学生時代にあらゆる苦痛を与えた。制服がサンドペーパーに感じ、靴下が極端に嫌になる。授業中は筆記音で集中できず、給食は食べられるものがない。休み時間は生徒の声が反響し頭痛が起こり、ベランダも川のにおいが苦痛で逃げ場がない。宿泊行事も、何も食べられず途中離脱となった。
幼少期から「“感覚過敏”という言葉は、私も親も知らなかった。小さく産まれ、かつ2月の早生まれで『できないのは当たり前』という環境で育った。周囲よりできることが少ないとは感じていたが、自分では『できないことが多い、わがままな子なのかな』と思っていた」と振り返る。
小学校で一番つらかったのは給食だという。「学校では絶対に一口食べないといけないルールがある。臭いも強いが、食べないと友達から『なんで食べないの』と言われる。身体的ストレスや、食べられないつらさがあった」。
当時は「みんな我慢している」と思っていたが、中学1年で“感覚過敏”の存在を知った。「教室の音環境が苦手で、保健室に通っていた。先生に相談すると、『聴覚過敏ではないか』と言われた。それまでは『苦手なことが多い』と認識していた」と語る。
加藤さんの母は、感覚過敏がある子がいる親ゆえの後悔を明かす。幼少期、食事で作った料理の野菜を小さくしたり、キャラ弁にしたり、工夫しても食べてくれなかった。当時は感覚過敏を知らず、わがままだと思って大激怒し、今でも後悔しているという。感覚過敏を知った時は、少し気持ちが楽になったそうだ。
■感覚過敏はなぜ起こる?
