「“人身売買”とか昔からよく言われる」

紹介センター職員とのやり取りに“違和感”
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 結局、女性の父親は大阪府内の有料老人ホームに入居。その後、見学に行った特養で女性はこんな言葉を耳にする。

「『先月までだったら普通にすぐ入れましたよ』『待機なかったですよ』って言われた。絶対分かっていたのに有料老人ホームしかないと思い込まされたことが一番悲しかった」

「つり上げられた手数料を獲得することを目的として、利用者さんをないがしろにした手数料目的の紹介、“人身売買”とか昔からよく言われる。そこは是正していかないといけないのは強く感じる」(opsol高齢者・ケア住宅紹介サービス代表 石津さん)

 問題はこれだけではない。東洋大学の高野教授は、紹介料の高騰は入居者に対する過剰な介護・医療につながっていると指摘する。

「週に2回ぐらい看護師さんが訪問すればよいと思われる人でも、看護師さんが1日3回訪問する。そうすると、1週間あたり訪問看護の頻度は10倍以上。そうすると訪問看護に支払われる診療報酬も10倍以上になる。過剰に提供されている医療や介護の費用がその紹介料の元手になっているのは、やはり本質から外れていると言わざるを得ない」

 高野教授は、紹介センター側にも一定の規制を設けるべきだと話す。

「老人ホームも紹介業者も、それぞれに社会的に必要な存在だ。そこを、ぜひむしろ伸ばしていくような形で一定の規制をしていくことが求められるのでは」

 さらに高野教授は紹介事業者の必要性について「とても高い。実は様々に高齢者福祉は発展してきており、主なものだけでも『特別養護老人ホーム』『介護老人保健施設』『介護医療院・養護老人ホーム』『軽費老人ホーム』『認知症グループホーム』『有料老人ホーム』(介護付き、住宅型、健康型)『サービス付き高齢者向け住宅』など種類がある。我々専門家でも『この人の一番』がどこかちょっと考えないと思い出せないぐらいになっている」と説明。

 ただし、懸念点として「紹介業者は自由に開業ができ、業務内容も特段規制も規定もなく、紹介料にも規定はない。本来、紹介業者は利用する高齢者の状態と、入居先の老人ホームの得意分野、建物の構造や介護の特徴などが合っているところを選んで紹介すべきだが、『本人に合っていようが合ってなかろうが、紹介料を高く払ってくれるところに紹介しよう』とすることが起こり得る状況にはなっている」と述べた。

「高齢者の尊厳をないがしろにしている」

入居紹介料
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 番組が入手したのは、施設側が紹介事業者に示した紹介料のチラシ。高野教授は「要介護認定を受ける人の場合、要介護5の人だったら約36万円までサービスが使える状況なので紹介料が30万円に設定されているのでは。障害を抱えている人の場合は市町村によって対応が違い、月50万円〜200万円まで介護サービスを認めるため介護保険よりも収益が上がるということで、紹介料も50万円と高くなる。『医療案件』は、先述のようにパーキンソン病の人とかALSの人とか、あるいは喉元に穴を開けて呼吸をしやすいようにしている処置をしている人で、一定の頻回なケアがいる人の場合は限度がなくなる。そのため、月100回ぐらい訪問看護が可能になり、月100万円ぐらいの収入になるので、紹介料も100万円を払うことができるのでは」と説明した。

 その上で、「“人身売買”という指摘があったが、私も全く同感だ。しかも、状態が悪い重度の人の方が高く紹介を受ける。軽度の人は費用も紹介料も安く済むというのは、非常に高齢者の尊厳をないがしろにしているような気がする」と述べた。

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