“脱法的”に稼ぐ施設も
施設の主な収益について高野教授は「サービス付き高齢者向け住宅や住宅型有料老人ホームは、基本的に建物を提供するところ。『月額費用等』で普通はビジネスを成り立たせるが、同じ事業者が医療サービスの提供主体や介護サービスの提供主体を一緒に経営した方が入居者の人にとっても助かるので、併設されているところもある。ただ、そうなると、実際には一体的に運営しているため、『医療・介護の方でどれだけ稼げるか』で勝負をする高齢者向け住まい施設も出てくる。また、家賃などを不当に低く抑えておいて『うちの施設は安いですよ』と見せかけておいて、入居後に同じ法人あるいは関係法人が提供する医療サービスや介護サービスで脱法的に多くの費用を稼ぎ、そこで収支を合わせる経営をしているところも散見されている」と説明した。
価格の正当性については「例えば介護サービスの場合、月額最大で36万円だが、あくまでその人の必要性に応じて使うことが公的なルールで、必要性がないのに月36万円介護サービス使うのは脱法行為だ。『医療』に関しても、紹介料が高くなったりすると100万円、あるいはそれを超えて医療サービスを提供しようとする事業者も出てきていて、これも脱法的な行為だと思っている。だが、『月100万円使うのが悪い』ということになってしまったら、本当にそれだけの介護や医療が必要な人がそのホームあるいは高齢者向け住まいで暮らせなくなってしまうし、状態を悪化させてしまう、場合によっては寿命を短くさせてしまうということにもなってくる。批判の仕方とか、今後起こり得る規制のあり方とかに関してはしっかりと検討し、一概に悪いと決めつけないことが大事だ」と述べた。
対策をしなければ、税金や保険料が高くなる
18日、福岡厚生大臣は「不適切な手数料設定を行うことで公平性に疑念を持たれる事案が存在すると承知」「厚生労働省としても有料老人ホームによる不適切な紹介料の提案は指導対象になることを明確化した」と国会で述べた。
これを受けて高野教授は「医療や介護の費用の給付の元々の原資は、我々が払っている保険料や税金が元手であるため、回り回って税金や保険料が脱法的に使われているということになり、何らかの対策をしなければ、結局税金や保険料が高くなる」と述べた。
「不正が起こりやすい構造になっている」
2月7日、サンウェルズ(パーキンソン病の有料老人ホームを運営)が訪問看護による約28億円の不正請求を発表した。
これを受けて高野教授は「けっして多数派だとは思っていないが、少なからずあることは間違いない。最大の問題は、医療や介護については高齢者の自己負担も発生するが、高額療養費と同じように『高額介護サービス費』として月額1万5000円ぐらいまでで抑えられる人もおり、それ以上いくら使っても自己負担は同じなので、高齢者にも見えにくいことだ。医療費も、難病の人だと国の施策で患者の自己負担が月額2000円とか1万円とかで抑えられる仕組みがある。その対象になっていると訪問看護が何回あっても自己負担が増えるわけではないから気づかず受け入れている。そういうことで、今みたいな不正が起こりやすい構造になっている」と実情を述べた。
「医療や介護で仕事をしようと思っている人は、儲けようと思っていない」
業界はどのような対策をとるべきなのか?
「公的な規制が入る前に、きちんと自浄作用を働かせることが大事だ。結果的に悪いことをしているところが儲かり、いいことをやってるところが儲からない。そうすると、悪いことやってる事業所がどんどん増えていって、まさに悪貨が良貨を駆逐する状態になって業界全体が批判に晒される、あるいはシュリンクしてしまう。そのため、なんとか現場の人たちでガイドラインを作るなど公正なサービスを提供するようにしていただきたい」
“現場”の人たちの士気は?
「そもそも医療や介護で仕事をしようと思っている人は、儲けよう、まして不正をしようなんて思っておらず、患者さんや高齢者・障がい者のためにどれだけ適切に仕事ができるか、その人たちの生活の質が上がるか、病気が治るか、生活の困難さを解決していけるかで仕事をしようと思っている人が多い。経営主体がよからぬことをやっていると思うと、そんなことは絶対やりたくないと、どんどん人が離職する。今回の案件も一部はそうした離職した人たちが、内部通報などをされている。働いている従事者の皆さんの善意も食い物にしてしまっている」
(『ABEMAヒルズ』より)
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