■“秘密録音”は犯罪?法的な線引きは
「ハラスメント対策に録音は必要」だとする武山茂樹弁護士によると、刑事と民事の両面で考える必要があるという。「刑事は『犯罪になるか』が問われるが、“秘密録音”は基本的にならない。民事では、勝手に録音したことによる損害賠償と、録音データを証拠にできないリスクがある。ただ、ケースバイケースだが、秘密録音は、両者の同意を得ないで勝手に聞いた“盗聴”よりも適法になりやすい」と説明する。
法的な解釈としては、「『絶対とらないでね』と言われて録音したら、基本的には違法になる。しかし、何も言わないで録音する場合には、口の軽い人に話したのと同じ扱い。要するに『録音するような相手に話した人が悪い』ということで、適法になりやすい」そうだ。
無断録音の有効性をめぐる民事的判断として、昭和52年7月15日の東京高裁判決がある。ここでは、料亭での酒席で秘密録音されたテープの証拠能力が、争点のひとつになった。高裁の判断は「秘密録音の証拠能力はその手段が著しく反社会的かどうかを基準とすべき」としたもので、「会話を無断で録音したことは、反社会的とまでは言えず証拠能力を有する」と判断した。なお、録音内容の評価はまた別としている。
では、録音したデータをSNSなどで公開したら、どのような判断になるのか。武山氏は「録音と公表は、全くの別問題だ。公表することで、プライバシー侵害や名誉を傷つけると、民事で違法になり、犯罪にもなり得る」としつつ、「名誉を傷つけた場合でも、公益性や公共性などの要件を満たせば、名誉毀損が適法になる場合もある」と解説した。
■「一部を切り取られてしまうと…」録音悪用の懸念も
