■「一部を切り取られてしまうと…」録音悪用の懸念も
リスク回避の目的で録音の重要性が注目される一方で、音声情報分析の専門家は、録音を悪用されるリスクを指摘する。明治大学総合数理学部の森勢将雅専任教授は、「ずっと話していることを録音する研究があるが、それを切り貼りすると、言っていないことを言っているかのようになる。切り出されて危ないことが起きる可能性はある」と話す。
文脈が切り取られる例として、「ゼミ指導でもネガティブな言葉には気をつかう。学生から冗談半分で『これ落としたら留年ですよね』と聞かれ、『君は留年だよ』と返した時、そこだけ一部を切り取られてしまうと怖い。互いに信頼関係があると思っているのは、教員側だけなことが多いため、言ったらマズいことは原則言わないと決めている」。
近年では録音を元にした“フェイク音声”が生成される懸念もある。「まだ研究段階だが、おそらく10〜20秒の音声から、その人の声のコピーを作れる時代はもうすぐ来る。自分の声をたくさん収録するのではなく、不特定多数の声をベースにした声に、自分の声を少し入れてマネさせる技術がある」。
一方で、「これも研究段階だが、合成音声を判別する技術もある。将来的にそれができないと、フェイク音声を作られて危ない。本人の声か、合成して作られた声かを見分ける技術が研究されている」という。
武山氏は、過去の判例で「酒の席で録音したケースがあった。ドラマの契約が成立したかを争ったが、『証拠にはできるが、酒の席では大きなことを言うから』と、契約成立が認められなかった」と紹介する。「証拠として出せる“証明力”はあるが、契約成立は認められないだろう。切り取った音声の信用性は低く、バランスは取られていると思う」。
飲み会での音声が、加工される可能性はないか。森勢氏は「周りの音を消すのは難しい。騒音から1人だけの声を取り出す技術ができつつあるが、消し残りが出てしまう。誰が話しているかの検出はできると思うが、全くの無音はさすがにまだ難しい」とした。(『ABEMA Prime』より)
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