「人々は家族を失った悲しみに対処することに時間を費やすべき」

クロージャーCEOのグラシエラ氏
拡大する

 事業についてCEOのグラシエラ氏は「基本的に、私たちが行うことは亡くなった方のすべての契約口座や加入契約を終了させたり、所有権を変更したりすること。その範囲は、銀行口座・保険・通信回線・慈善団体への寄付など、基本的に契約できるものすべてだが、ソーシャルメディアなどのデジタルアカウントやストリーミングサービスなども含まれる」と説明。

 まず遺族は、銀行口座の明細から契約しているサービスを確認する。そして、クロージャ―のHPから使用していたサービスを選択し、死亡診断書をアップロード。その後の手続きは、全てクロージャ―側で処理するという仕組みである。このサービスを実現する上で重要になるのが、通信事業者や銀行、各サービス会社との連携だ。

「私たちはヨーロッパの金融市場当局からライセンスを取得しているので、金融機関と協力するためのライセンスを持っている。これは非常に重要なこと」(グラシエラ氏、以下同)

 パートナー企業は1600社以上にのぼり、利用料金は無料で年間約6万世帯が利用しているという。

「私がこの活動を始めたのは7年半ほど前。友人の一人がFacebookで『おばあちゃんおめでとう』という通知を受け取ったのだが、彼女のおばあちゃんはすでに亡くなっていたのでとても気まずい思いをした。なぜなら、その後、人々の反応の通知が届くから。家族として、なぜ様々な人に連絡をして、愛する人を失ったことを何度も伝えなければならないのか。とても辛いことだ。そこで、私たちは、1回の手続きですべてを提供できるサービスを立ち上げて、家族の負担を軽くしようと考えた」

 遺族の悲しみを少しでも減らしたいとの思いで始まったクロージャ―。グラシエラ氏は、今後もAIなどを活用し、利用者にとってより負担の少ないサービスを提供していきたいと話す。

「長期的な目標は、世界中の家族に参加してもらうことだ。なぜなら、人々は家族を失った悲しみに対処することに時間を費やすべきで、事務的な面倒なことに時間を費やすべきではないからだ。コンピューターの操作に慣れていない高齢者の中には、詳細を入力するのが難しい人もいるので、よりユーザーに対して親近感を持ってもらえるようにしている。電話での応対やデジタル入力の情報について送信するなど、工夫をしている。世界中の家族を引き込むために私たちがするべきことは、世界中にこのシステムを存在させることだ」

安野貴博氏が「分身AI」を提案
この記事の写真をみる(3枚)