■休日の朝、自宅前に多数の捜査員が…
9年前のその日、朝9時ごろに塚本さんの自宅の呼び鈴がなった。「玄関を覗いたら、結構な人がいた。何だろうと思いながらも、役所の人と言うから本当だろうと思って開けたら、麻薬取締官の捜査員の人たちだった。私が逃げないように鍵を開けたらなだれ込んできた。まずいことになったのは分かっていたが、冷静にいなきゃという気持ちの方がすごく大きかった」。逮捕の理由は違法薬物の所持・製造の疑い。かつて「危険ドラッグ」などと呼ばれていたものだ。「合法なやり方で、同じような効果があるものを作ったというサイトを見つけた。もともとの危機意識も薄かったし、そこは反省するしかない。私の失敗なんだと思う」。
塚本さんが所持・製造した危険ドラッグの一種「ラッシュ」は、以前は合法的にアダルトショップで売られていた。これが2007年に「指定薬物」に認定され、販売禁止に。2014年には法改正で危険ドラッグとして所持・使用・購入が違法になった。学生時代、ラッシュを使用していたが、東京に来てライバルも多く、大きなストレスも抱えていた中、再び手を出し、そして逮捕された。合法的に同じような効果が得られるというサイトに騙された形にもなったが「信用してしまって、本当に馬鹿だなと思う」と後悔の念は大きい。
逮捕から1日経ち、検察に送られる際、警察車両の中から多くの報道陣を見た。これまで犯罪のニュースを“伝える側”だった塚本さんが、“伝えられる側”になってしまったことを、まざまざと体感した。「私の背負っていた看板があると、どれだけ(報道)の人が集まるだろうと考えると、何となく想像もできた。今まで見たことのない景色というか、レンズのこっち側と映る側。自分の中でもショックだったし、なんてことをしたんだろうと強く思った」。カメラのフラッシュが大量に光る中を、塚本さんを乗せた車両が通過した。
■仕事も住居も見つからない日々
