■佐々木俊尚氏「同じことを事件当時にしたらみな有罪にしただろう」
模擬裁判の狙いについて、村山氏は「裁判員裁判の広報企画を考えた時、実際に“評議”を体験してもらうのが大事だと思った。当時注目されていた袴田事件を題材にすることで、皆さん目を輝かせて評議に取り組んでもらえると思った」と説明。
その評議では、「みそタンクから発見された」と捏造された“5点の衣類”について厳しい意見があったという。「カラー写真を見た主婦の参加者が『みそに漬けたらもっと色が付く』と言ったり、ズボンよりステテコに多く血が付いていて、位置も一致していないと。市民感覚では『この証拠で本当に死刑にするのか』という意見が強く出た」。
これを受け、評論家で情報キュレーターの佐々木俊尚氏は「袴田事件が『えん罪だ』と言われるようになった後、関心がある人が参加するから模擬裁判で議論ができる。しかし、同じことを事件当時にやっていたら、有罪にしたと思う。民意は時代に流されやすい」との見方を示す。
内閣府による先日の世論調査では、死刑制度に「やむを得ない」が83.1%、「廃止すべき」が16.5%だった。これを引き合いに、「裁判員制度も、検察の求刑よりも重い判決を出す厳格化が指摘されている。法曹界の常識が覆されて、どんどん判決が重くなるのは、我々が想像しない世界だった」と懸念を示す。
しかし村山氏は「必ずしも厳罰化しているとは思っていない」と語る。「最初は求刑超えの判決があったが、最近はない。執行猶予率も、裁判員裁判の導入で『若い被告人などはもう一度チャンスを与えよう』と高くなった。1人で更生しにくい人に、保護観察を付けて、社会で立ち直らせようとする割合も増えている」。
■裁判員経験者に聞くメリット・デメリット
