■裁判員経験者に聞くメリット・デメリット

 中川さん(26)は、2022年9月から約1カ月半、裁判員を経験した。担当した事件は、暴力団による殺人事件で、主犯以外の2人である(殺害現場まで被害者を連れてきた)AとBが殺人に関与したのかが争点だった。最終的に、2人とも殺人・死体遺棄・死体損壊から、無罪判決となった。

 実際に裁判員を経験した立場からは、「自分が覚えた違和感を伝えられるか」が疑問だったという。「裁判官が『有罪じゃないか』と言えば、市民側もそう見えてくる。自分が参加した裁判では、裁判官が発言しやすいようにしてくれたが、当時もし裁判官が入っても、自由に発言できたのだろうか」と明かす。

裁判員制度に対する疑問
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 参加のハードルには、拘束時間もある。最高裁判所によると、初公判から判決までの平均日数は14.9日(2023年)。中川さんの場合は7週間の拘束となり、主に週4日前後、1日5時間程度の参加となった。

 当時を振り返り、「期間が長くて1カ月授業に出られず、殺人や死体損壊の状況を詳しく聞かないといけない。(精神的な)つらさもある」とする。一方で、メリットもあったといい、「何をしているかわからなかったが、丁寧に裁判を進めていることがわかり、司法に対する信頼が上がった。もうひとつが、裁判官も同じ人間だと感じたこと。少し偏見を持っていたが、『女性もいるんだ』『笑うんだ』など細部を理解でき、司法をより身近に感じられた」と語った。

■辞退率7割…裁判員制度の課題は
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