衆議院予算委員会で可決された新年度予算案。なぜ与党は国民民主ではなく、日本維新の会を選んだのか? 維新・前原共同代表がXに投稿した「大学無償化」にはどのような意義があるのか? ダイヤモンド・ライフ副編集長の神庭亮介氏に聞いた。
与党が日本維新の会を選んだ理由について、神庭氏は「与党は国民民主党との間で『103万円の壁』引き上げの協議をしていたが、満額回答すると7兆円から8兆円かかってしまう。それに対して、日本維新の会が求めてきた高校授業料の無償化は5000億円ぐらいで済む。『これで予算に賛成してもらえるなら安上がりだ、維新と握っておこう』という判断だろう。国民民主からしたら、維新と前原共同代表に煮え湯を飲まされた格好だ」と分析する。
教育無償化をめぐって、日本維新の会の前原共同代表は3日、Xに「次は大学無償化に取り組みます。制度設計を策定した上で」と投稿。ネット上には「無償化ではない税負担化」「私大を国が無償化する意味が分かりません」「まず国立無償化をお願いできればです」「時間はかかるでしょうが教育格差をなくすためには良い方法だと思います」などの声が広がった。
そんな大学無償化について、神庭氏は以下のように懸念を示した。
「無制限の大学無償化は問題が多い。そもそも論として、みんながみんな大学に行く『大学進学率100%』の社会を本当に目指すべきなのか? 一口に大学と言ってもピンキリだ。なかには、学生にアルファベットや分数の計算を教えている大学もある。『そういったトレーニングをして社会に送り出すことには立派な意義がある』という声もあるが、私はそうは思わない。大学は高等教育機関。アルファベットや分数は小中学校で履修する内容で、理解が不十分だとしたら、大学ではなく義務教育の予算を手厚くするべきだ」
「社会全体を見渡した時に、ホワイトカラーのデスクワーカー、特に事務職が余っている。今後、AIの普及でさらにそうした傾向が加速するかもしれない。一方で、エッセンシャルワーカーやブルーワーカーの業種は人手不足に陥っている。そんな状況で大学を無償化して無節操に進学を後押しすれば、社会のニーズと学生のミスマッチがますます広がりかねない」
「ゾンビ大学が延命してしまう」
