■情報戦・組織力でオウム真理教に遅れを取った警察

垣見隆さん
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 改めて、どんな課題がクリアされていれば、警察は地下鉄サリン事件を防げていたのか。五十嵐氏は、事件前に踏み込めなかった理由として「宗教法人だから入れない、宗教の自由を守らなければいけないという、民主警察としてのためらいはあったと思う。ただし、大量破壊兵器であるサリンを作ることは、宗教法人だから許されるということでは全くなく、捜査にも関係ない。兆候がありながら動きが遅い、情報共有ができていないというのは、一貫して感じた」と語った。

 また清田氏は「3月22日に一斉捜査するのは警察幹部が日程を決めていた。ただ、オウムの中には警察官もいて、その情報が漏れていたというような話もある。オウムが警察の先手を打って、20日に戦後最大と言われる未曾有の事件が起きてしまったのかもしれない」と述べた。また五十嵐氏も「戦後日本が採用した自治体警察という仕組みで、47都道府県それぞれに警察本部があり、県に所属している。だから警察庁は全く指揮したり指示したりはできない。垣見さんの話を聞いて一番印象に残ったのは(警察同士が)その調整をやってくれていない、加わってくれないこと。この調整で非常に時間がかかっている。オウム真理教の方は、トップの松本が『こう、せい』と言えば、それで動き出す組織。この組織の違いが一番大きかった」と説明した。

 情報戦と組織力では、警察側がオウム真理教に遅れを取っていた。一連の事件を受けて、後に警察法は一部改正され、広域組織犯罪では管轄警察以外も捜査に参画できるようになった。また組織犯罪対策として、科学捜査態勢の強化や、テロを起こす恐れのある集団を早期発見するための組織やシンクタンクも立ち上げている。これに清田氏は「オウム事件を教訓に、広域捜査ができるように警察法が変わった。今は、闇バイトの事件も非常に広域捜査だが、昔に比べればはるかに効率的な捜査はできている」と評価していた。
(『ABEMA Prime』より)
 

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地下鉄サリン事件から30年...防げた?教訓は?警察とメディアとオウム真理教
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