■“いじめ加害厳罰化”には難しさ 「少年法の目的は加害少年の更生」

 私立高校教師・弁護士・大学教授として、最前線でいじめ問題に向き合う神内聡氏は、いじめ加害者の厳罰化にはハードルがあると話す。1つは、公立の小中学校は停学・退学をさせられないため、加害者に対して学校にできる対応が限られること(私立の小中学校では退学は可能)。もう1つは、「無視」「LINE外し」のような心理的ないじめは事実認定や判断が難しく、学校側に適切な認定・判断をサポートできる人材が非常に少ないことをあげる。

いじめ重大事態認定
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 2013年に成立・施行したいじめ防止対策推進法では、いじめを「一定の人間関係にある人が行う、心理的・物理的影響を与える行為(ネットも含む)」「対象になった児童等が心身の苦痛を感じている」と定義。学校側へは、事実確認や児童・保護者等への支援、加害を行った児童等への指導、懲戒・出席停止制度の適切な運用等を求めている。

 それも踏まえ、神内氏は「厳罰化の文脈で、例えばいじめを犯罪として扱うべきという意見は多いが、未成年の犯罪となれば基本的に少年事件の扱い、つまり少年法の範囲になる。いじめ防止対策推進法は被害者の支援を目的としているが、少年法の目的は加害少年の更生。目的が異なるので、いじめを犯罪として少年事件で扱うことが、必ずしも被害者支援に繋がるかは不明だ」との見方を示す。

 また、さらなる課題として、「いじめ防止に関する教職員への研修は法律で義務付けられているが、意外と徹底されていない。そして、今の法律は保護者に向けた義務はないという点で、いじめ防止と家庭との連携も課題になっている」とあげた。

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