■大人の自傷行為…原因は?

村松英之院長
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 村松氏は、リストカット行為について、医学的見地から「以前より見られるようになっている。SNSでも増加している印象はあるが、データ自体はない。ただ、ノルウェーの精神科で、死にたくなくて切る“非自殺的な自傷行為”の患者が、以前より増えているというデータもあるため、全体的に自傷行為が増え、その中で大人も増えているのではないか」と推測する。

 自傷行為は、どういう人に多いのか。村松氏によると、「真面目で優しい性格」「怒りやストレスを外に出せず内に溜めこむ」「親からの過干渉、過保護またはネグレクトを受けた」「精神的に敏感」「他人の気持ちを優先する」といった傾向がある。

 自傷行為をする人に対しては、“誤解”もあると指摘する。「アピール目的が多いと言われるが、自傷を始める人は、基本的に1人で隠れて行う。死にたいくらい、つらい感情や怒り、悲しみ、絶望が頭の中をめぐったときに、リストカットすると落ち着くらしい。その効果は絶大で、それを代償するものは思春期にない」。

 リストカットをやめる時期として、「一番は親から離れたり、学校を転校・卒業したりするタイミングが多い。その次は精神科や心療内科にかかるのが、やめられるきっかけとのデータが出ている」と説明する。

 こうした思春期の自傷行為に比べて、大人のそれは目立ちにくいようだ。「思春期はほとんどが家庭や学校の悩みだが、大人になると、仕事の人間関係やブラックな労働環境、家庭の配偶者や子どもの問題がある。PTSDや大事な人の死でストレスがかかり、解消するためにリストカットを始める人も多い」。

 具体的な対処方法について聞かれると、「やはり本人の問題で、周囲がどうしようもない部分もある。ストレスを和らげるために行う行為で、依存症の一種でもある。仮にリストカットをやめても、アルコールや摂食障害、オーバードーズとぐるぐる回る可能性がある」といったリスクを示す。

 また、重要なのは「根本的な悩みだ」といい、「どうしてストレスを抱えているのか。どうして自傷行為をしなくてはいけない状況なのかを見ずに、ただ『やめなさい』と言っても、本人はわかっている」と述べた。

■「大人になったら精神科医や心療内科に通うのが一番いい」
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