退職金制度は労働市場にどんな影響を与えている?

“退職金課税”の見直しは必要?
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 退職金課税の見直しについて、The HEADLINE編集長の石田健氏は「まず、退職金という制度が日本の雇用の流動化を妨げている側面があることは確かにそうだろう。研究者の間でも“流動化を妨げる摩擦になっている要因”として退職金は大きいと。そのため、例えばこれを『現役世代の賃上げの原資』、あるいはよりリターンの高い金融商品に振り向けることでリターンが出てくる。その金額をもっとうまく活用していこうという話自体は指摘されているので、必ずしも『退職金に課税するか否か』という前に、そもそも退職金制度が日本の労働市場にどんな影響を与えているかを考えた方がいいと思う」と述べた。

 これまでの制度が同じ会社で働き続けるインセンティブにはなっていたのだろうか?

 石田氏は「働き続けるインセンティブにもなり、もう少し言うとミスマッチとか嫌な会社に関しても“そこに留まり続ける負のインセンティブ”にもなってしまっている」と指摘。

 退職金課税の見直しは岸田政権の時にも言及されたが見送りとなっている。踏み込みづらい話題なのか?

 石田氏は「社会保障などに比べて必ずしも踏み込みづらいわけではないと思う。とはいえ、働いている人のほとんどに関係し、しかも大企業の平均で2000万円くらいの金額のインパクトが大きいところを考えると、ネガティブな反応を示す人が多いのはわかる」と説明した。

 今後、どのような対応が求められるのか?

「『労働慣行』の議論に関しては総裁選の時点から出ていた。小泉進次郎候補とかが『日本の流動化を高めたい』などと言っており、石破総理もかなり自民党内ではリベラルというキャラクターだったが、今では『やっぱり流動性を高めなくては』というところまで来てはいるので、そういう意味では避けられない側面ではあると思う。なので、課税に関しても議論をする。ただ、『拙速にできない』という意味では、ちゃんと労使交渉だったり企業内で議論がちゃんと進むように、案として出していくことは必要なのでは」

 石破政権は「ネット上の声」を気にしているのだろうか?

「気にしていると思う。近年の自民党はかなり“観測気球”を上げて、ネットの声を見て政策を取り下げるみたいなことをよくやっている。また、今、国民(民主)や維新のように『現役世代の手取りを上げること』を前面に押し出している。一方で自分たちは現役で働いてる人たちの課税を強化すると、“違い”が際立ってしまう。そういうところが自民党内の意思決定を難しくしてる側面はあると思う。ただ、そういった国民、維新、自民党も含めて、やっぱり『現役世代の手取りが上がらない問題』にどの党であっても取り組まなくてはいけないので、その“最善策”が果たして退職金の課税なのか。そうではなく、それこそ社会保障や手取りが解消されれば、20年〜40年働いた後の2000万円のためではなく、『年収をちゃんと引き上げよう』みたいな方に議論が行く方が建設的だと思うのでやってほしい。もう一つは『世代』だ。退職金を前提に設計している世代もいれば、5年ごとに転職するのが当たり前の世代もいる。この対立をいかになくしていくかも焦点だ」
(『ABEMAヒルズ』より)
 

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【映像】「気持ち悪い」 小学校隣接の公園で性的ビデオ撮影
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