「好きだからこれだけお金をかけてるんだ」と錯覚
精神科医の木村好珠氏は「承認欲求が一つのポイントだ」と指摘する。
「最初はリスナーたちがライバーを応援したい、少しでも支援できたらという気持ちの投げ銭だ。だが、だんだん高額なものをしているうちに周りもどんどん加熱していって『自分のことをライバーに知ってほしい』と。『○○さんありがとう』などの言葉を求めて、自分が特別に知られている存在になってほしいという承認欲求がどんどん出てくることでリスナーがお金を出してしまう。さらに、ライバーにもランキングがあるので、上位に立ちたいという承認欲求が出てくると、互いに満たすために、どんどん高額な争いになってくる」
もう一点、木村氏は「サンクコスト誤認」も要因だと説明する。
「サンクコストの誤認は心理学の用語で、多額のお金を出せば出すほど、時間を費やすようになってコストがかかればかかるほど、自分がその人のことを好きだと自覚してしまうというもの。自分自身がお金をかけている、時間をかけているということは、その人に対して本当に好きだという気持ちがないと“パラドックス”が生まれてしまう。そのパラドックスを人間は埋めたくなる。矛盾がある状態を解消したいがために、『自分は好きだからこれだけお金をかけてるんだ』と頭の中で錯覚してしまう。なので、“重課金”と言われるような、お金をかければかけるほど、どんどん承認欲求も求めてしまうし、さらに自分が好きだという感情にもなってしまうので、さらにお金をかける」
では、ライブ配信という業態は規制すべきなのか?
木村氏は「私としては、ライブ配信という業態自体は悪いことではないと思う。それ自身を楽しんでいるリスナーもライバーもいる。あくまでアイドルというものが昔からあって、その形態が違ったり、時代とともに変わっていく。デジタルという文化ができ、さらにコロナ禍でなかなか人に会えないという中で、オンライン上で誰かと会える、誰かと話せるという形態ができたことが、いろいろな人の気持ちを救った部分もあると思う。やっぱりアイドル推し活は元気をもらえる。そのため、それ自体のスタイルがけっしてダメなわけではないと思う。ただ、守りたいところはいろいろあるだろう」と述べた。
(『ABEMAヒルズ』より)


