■情報流通プラットフォーム法とは
4月施行の情報流通プラットフォーム法では、事業者にいくつかの対応を義務づけている。まずは削除要請対応窓口を設置・公表し、削除などの申し出から7日以内の通知を規定。明確な削除基準の作成と公表を行い、侵害情報調査専門員を選任(プラットフォームごとに1人以上)する。これらの実施状況を年1回公表し、罰則として法人には1億円以下の罰金などが課せられる。また、ガイドラインでは「第三者からの削除要請についても、速やかに対応を行うことが望ましい」とした。
自民党のネット誹謗中傷対策プロジェクトで事務局長を務めた三谷英弘衆院議員が、今後の流れについて、「まずは人口の約1割(約1000万ユーザー)などの条件を満たしたものを“大規模なプラットフォーマー”として指定する。指定されたプラットフォーマーは通報窓口の設置が義務づけられ、そこへの通報に対しては7日以内に『削除する』『削除しない』といった返事をする義務も課せられる」と説明した。
一方で、メディア社会学を専門とする法政大学の藤代裕之教授は、この法律の実効性に疑念がある。削除基準制定と侵害情報調査専門員設置に対しては、「プラットフォームはあくまで“場”」であるとして、「調査員は信用できるのか」「言論を選別したら“メディア”」と指摘する。また、第三者が削除要請可能になることには、「対応すべきは当事者で、第三者やプラットフォーマーの介入はすべきでない」と考える。加えて、海外プラットフォームへの対応についても、「そもそも、Xのイーロン・マスク氏が言うことをきくのか」と問う。
業界事情として、「プラットフォーマーは、言うことを聞かない。あくまで“場所貸し”で、そこで勝手なことをやっても対応してくれないから、対応してくれという法律が情プラ法」と説明しつつ、「事業者に透明化や対応を求めるもので、“国のSNS規制”というのは誤解だ」と語る。
とはいえ、「プラットフォームは、そもそも色が付いていない場所」だと考えると、昨今の動きには疑問を感じるという。「米トランプ政権についてのX投稿のように、単なる“場所貸し”ではなく、色が付いている。あれは『イーロン・マスク新聞』というメディアだ。メディアとプラットフォームの境目が曖昧なまま、プラットフォーマーに規制を任せると、異なる“誹謗中傷”の判断基準になるおそれがある」。
三谷氏は、この指摘に「プラットフォームは責任の主体が“発信者”にあるが、メディアは“媒体社”になる。書き込みの責任は、投稿者にあるという立て付けは今後も変わらない」と返答する。
情プラ法の前身となるプロバイダ責任制限法は「副次的にプラットフォーマーが責任を負い得ることを前提に、削除すれば免責する法律だった」として、今回の法施行で「プラットフォーマーの義務は『削除しなければならない』と重くなったが、本来的な『責任の主体はユーザーにある』という立て付けは変わらない」と念を押す。
■「線引きが難しい法律を作ってしまっている」

