2ちゃんねる創設者のひろゆき氏からは、離農して田んぼを手放す者がいれば、それを譲り受ける形で、他の農家が大規模化して売り上げも増やすというケースも提案されたが、藤松さんの表情は曇る。「大規模化すると言っても、やはり設備がかかる。今、自分は小さいコンバインとトラクターでやっているが、大規模化するとなると、それも大きいものに切り替えないといけない。そうすると1台何百万円、下手したら1000万円かかる」とコスト面の不安をあげた。さらには天候リスクも大規模化すれば、さらに上がる。「去年ぐらいからお米の収量がすごく落ちた。たぶん気候変動だと思うが、自分としては、去年の収量は2割減った。今年ももう暑いという話になっているので、大規模化するのは大丈夫なのか、と思う」。

 農家の窮状を示すものとして紹介されたのが、コメ農家の「時給10円」という衝撃的な数字だ。データは農林水産省によるもので、大規模から零細まで、全てのコメ農家における農業収入の平均(作物収入から諸経費を引いた金額)は2021年、2022年が1万円、2023年は9万7000円だった。これをコメ農家の年間労働時間、約1000時間で割ると、2021年と2022年は、わずか10円。2023年は改善したといっても97円だ。さらに酪農家は農家よりも兼業のケースが少ないといい「上下の平均を取ると-48万8000円。お金を払って牛乳を絞っているようなもの」だという。

■なぜ効率化が進まないのか
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