■免許を返納させても事故が減らない?

免許返納の件数
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 2019年4月、東京・東池袋で高齢ドライバーが運転する乗用車が、赤信号の交差点に進入し、歩行者や自転車などを次々にはね、計11人が死傷するという事故が起きた。この事故を契機に、高齢者に向けて運転免許の自主返納が呼びかけられると、同年の返納件数は過去最多の60万1022人にもなった。そこから年々減少していたが、2024年度は再び増加し、42万7914人が返納した。

 ところが伊藤氏は、この免許返納が事故率の低下につながっていないと指摘する。「免許返納が増えても、全く事故は減っていない。(逆に)免許返納が下がっても、事故は増えていない。免許返納キャンペーンをしても、やめていく人は結構運転能力も高くて、すごく自分を客観的に見えている人から順番に運転をやめている。やめてほしい人は、ほぼやめていないことが浮き彫りになっている」。高齢ドライバーの中で「自分はまだ大丈夫」と運転を続け、周囲から返納を勧められても応じないケースも少なくない。一方、常に自分の運転を客観視できる優良ドライバーほど、自主的に返納を考えるというギャップが生じている。

 伊藤氏は、自身の運転技能のチェック方法についても工夫が必要だと考える。「家族から『もう危ないから免許返納した方がいい』と言われても、なかなか聞き入れられない。客観的に自分の運転を専門家に見てもらい、アドバイスをもらってほしい。山梨県警であれば、ドラレコのデータを使って警察官が指導してくれるものもある。こういうところは気を付けた方がいい、これ以上は危なくなるなど、専門家に見てもらうのが大事だ」。

■制度や技術で事故は減らせるか
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