■生活保護バッシングの弊害、必要な支援とは?

生活保護の実情
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 自治体職員として生活保護の窓口&ケースワーカーを経験、現在は受給者の支援活動をしている田川英信氏は、不正受給は全体の0.26%で、受給しているのも資格がある人のわずか2割だとし、バッシングの弊害を指摘する。

「バッシングされるから申請しなかったり、利用しているけれども心苦しくてしょうがない人がいる。しかし、小川さんは自分の生活さえままならない状態で、そのような方が働くのは無理だ。本当は気にせずゆったり過ごしていただきたいが、そうは問屋が卸さないというか、生活保護に対する嫌悪、危惧する人が多いのが非常に残念だ」
「加藤さんのように月に1、2回1000円で飲むのも、それで生活が破綻していないのであれば、楽しみは誰からも非難されるものではない。ギャンブルをしようがオペラに行こうが、支給されたお金でやりくりできるのであれば何も問題はない」

 2024年、群馬県桐生市でトラブルが発覚した。職員が生活保護受給者(申請者)に対し、冷蔵庫をチェックして「卵が4個も買えるなら必要ない」、メガネ購入に「税金でメガネ買うのはダメ」と怒鳴ったという。

 田川氏は「その方の能力に応じて働いていただくことを支援するのが、ワーカーの重要な部分だ」としつつ、「都道府県が監査の責任を負っているので、そういう水際作戦をやってはダメだと言わなければいけないが、なかなか弱い。“必要ない方が利用していないか”という観点の監査が多く、“必要な方がちゃんと利用できているか”が非常に弱い」と訴える。

 貧しくて自立できない人について、国や政府が面倒を「見るべきではない」と答えたのは、アメリカが20%、フランスが17%、中国が9%だったのに対し、日本は38%。「日本は自己責任、“自分の力でなんとかやるべきだ”という圧力がある。実は国連の社会権規約委員会から、生活保護の申請について“面倒くさい。もっと簡素化するように”“申請者が尊厳を確保しなさい”と勧告されている。国際的に見ても問題がある国で、私自身も気がついていなかったが、国民意識を変えなければいけない」とした。

 リディラバ代表の安部敏樹氏は「バッシングは全部撲滅すべきだが、きちんと向き合うべきは、捕捉率が2割であること。それが10割になった場合、単純に予算が5倍、規模で言うと約19兆円になるわけだ。国家財政100兆円の中で、その2割を出し続けられるのか。さらに、ロスジェネ世代と言われる、非正規の中で教育も人的投資もされなった人たちが、50代になってきつつある。彼らが65歳、70歳になった時、年金もそんなに払ってないし貯金もないとなったら、生活保護にかなり流れるだろう。そうなれば19兆どころでは済まず、制度をどう作っていくかは議論しないといけない」との考えを示した。

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