■症状は?確立されていない治療法 社会の目や医療、行政に課題も

 後遺症の診断基準はどこにあるのか。新型コロナ後遺症外来を設置し、8000人以上の患者を診察してきたヒラハタクリニックの平畑光一院長は「鑑別検査で『他の病気ではない』とわかり、後遺症の典型的な症状があるかどうで判断する。論文では200種類以上の症状が出ると指摘されていて、症状は10個、20個あるのが当たり前。精神障害と間違われるが、パターンは異なる」と説明する。

 人によって症状は様々で、対症療法しかないという。「漢方薬などを使いつつ、基本的にはセルフケアを推奨している。全国に患者がいる一方で、診てくれる医師はいないからだ」と紹介。また、「今日やって、明日すぐ治るものでもない。ある程度、後遺症と付き合う感覚も大事で、焦りすぎると悪くなることもある。きちんと知識を持って、無理をせずに付き合っていくのが大事だ」と続けた。

コロナ後遺症患者 病院をたらい回しに?
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 コロナ後遺症をめぐる課題として、医療面では「外来が閉鎖し、診察する医師も少ない」、行政面では「支援を受けたくても認知が低い」、社会面では「『怠けている』などの理解のなさ」がある。

 現場で起こっていることとして、平畑氏は次のように語る。「理解がある医師であれば診断書を書いてくれるが、なければ『後遺症ではない』『精神科へ行け』と言われる。しかし、精神科に行っても診断書はもらえない。当院の患者でわかっているだけで、3人が自殺した。いつ治るかわからない、家族に理解してもらえない、経済苦も重なって、『自分なんか生きていないほうがいい』と。場合によっては『そんなことで来るんじゃない』『なまけているだけだ』と罵倒する医師もいて、死にたい気持ちが増幅される」「『あなたの地域にそういう人は1人もいない』『高度な後遺症では労災が通らない』と言う労災職員もいるが、厚労省は対象疾患だと明言している。職員は知らないだけかもしれないが、結果として悪質な対応になる」。

 さらに、後遺症患者の診察が病院経営に不利となる可能性も指摘。2023年5月から、新型コロナ後遺症が2カ月以上続く患者に対し、適切な治療を行った場合は3カ月に1回「147点」を加算していたが、この措置は2024年3月末に終了し、“コロナ後遺症外来”が相次いで閉鎖した。そうした経緯もあり、コロナ後遺症は医者にとって“時間もかかるし儲からない病気”で、「『診察』の点数しか付かずとにかく診療報酬が低い」「点数を大きく稼げるのは『検査』だが、コロナ後遺症では検査をあまりしない」「その上、治療法が確立されておらず、治るまで時間がかかる」と問題点をあげた。

 なお、新型コロナ後遺症への支援は、労災保険では「仕事・通勤で感染し、後遺症による療養が必要と認められた場合は保険適用」、傷病手当金は「仕事・通勤以外で感染し、後遺症で仕事が困難になった場合、健康保険により支給」、障害年金は「後遺症で日常生活が著しく制限を受ける場合、要件を満たせば対象」となっている。

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