■小学1年生から車いす、高校は1時間かけ通学「私立は無理だと思っていた」
先天性の筋力が弱い疾患があり、小学1年生から車いす生活を送るともみさん。エレベーターが小学校在学中に設置、中学校は入学前から設置されたものの、高校は私立だと「どこも受け入れは難しい」との噂があったという。そのため、唯一の候補だった県内の公立校に、車で1時間かけて通学したそうだ。
ともみさんは、「私立は無理だと思っていたので、“通えないのはおかしかったんだ”と今は思う。公立に関しても、エレベーターがある高校がそもそも少ない。県内の通える範囲で選択肢に入るのは1校しかなく、あとは特別支援学校などだった。見学には行かせてもらえたが、周りの先生たちは『エレベーターがないから難しいよね』という反応だった」と語る。
東洋大学福祉社会デザイン学部教授の菅原麻衣子氏は、「小中学校は義務教育だが、高校はそうではない。ここに大きな差がある」と指摘。「また、バリアフリーの観点からすると、公立の小中学校は避難所にもなる。避難所としてどう機能するかは震災の度に言われることで、その必要性が社会で認識されやすい。子どもからすると、“行きたい学校に行きたい。チャレンジしたいのはみんな同じ思いだ”となるが、そこのギャップが全然埋められていない」と述べる。
学校のバリアフリー化に対する国からの補助は、2021年度以降、既存の公立小中学校の工事で一定の要件を満たす場合は、整備費補助の割合が3分の1から2分の1に引き上げられた( 国立大学1分の1(定額)、私立幼稚園~高等学校3分の1、私立高等専門学校~大学2分の1など、文科省より)。
ただ、学校にエレベーターを設置する際の費用は大きい。大阪・枚方市の試算・概算
によると、1基当たりの事業費は5500万円(設計費:500万円、工事費:5000万円)で、ランニングコストが年間100万円(点検委託料)となっている。
菅原氏は、「エレベーターはなかなか付けられないけれども、階段昇降機をつける、という学校もある。ただ、通る時に他の生徒が待ったり、時間がかかることを踏まえると、エレベーターのほうがいい。公立の小中学校のバリアフリー化は一生懸命進めていて、補助金も出ているが、公立として・私立としてどこまでやるかという経営判断は別な部分がある」とした。
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