■「全家庭」にケアマネは不要

原紘志氏
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 一方で「全家庭」にケアマネは不要だと考えているのが、精神科医の原紘志氏だ。全家庭にすると“薄く広く”になり、重度の障害児を抱える家庭などのハイリスクに目が行きにくくなると懸念する。まずはこうしたところを手厚くすべきで、困窮しているところにチームが関わるなどのケアをするべきとの考え方を持っている。

 障害児やその親をケアする立場から、「現状はセルフケアのプランを、両親が話し合って決めていて、ケアの分担は家庭の問題だ。直ちにヘルパーが必要か、保育所に入らないと危ういという状況でなければ、8割方の人たちは両親のセルフケアで成り立っている。そこにケアマネジャーが入っても、紹介できるサービスがない状況になる」と話す。

 高齢者の場合には、ホームヘルパーやショートステイ、ケアハウス、サービス付き高齢者向け住宅などがある。「高齢者のケアマネジャーは、こうしたサービスを組み合わせて、スケジュールを立てる。しかし子育ての時間はどう使うかとなると、ケアマネジャーに相談する時間こそがもったいないとなりかねない。それよりは、まず知的障害や精神障害を重点的にしてほしい。障害児の所得制限も足りていない」。

 この指摘に榊原氏は、「日本では『子どもの支援は家族が責任を持ち、困った人を支援する』のが基本だ。しかし、それにより虐待の相談件数は増え続け、中絶も多い現状がある。社会的支援があったら産むことができた人へのサポートも届かない。一方で“赤ちゃんポスト”には相談が殺到している」と反論する。

 日本の基本方針について、フィンランドで話したところ、「『必要なときに支援する』と言っても、必要になった人をどうやって見つけるのか。手遅れで重度になって、フォローが大変になってから、ようやく社会的支援が届く。私たちは軽度なリスクから支援するため、その後にフォローするコストが安く済んでいる」と言われたという。

 例として「親子が分離して施設に入る場合、乳児期から入った子どもは、成人までに1億円がかかる。分離しない支援が、実は節税になると、フィンランドやニュージーランドでは説明される」と挙げつつ、「日本では高齢者にしていて、子どもにやれないはずがない。そうしたメッセージを込めて、『ケアマネ』という言葉を使っている」と述べた。

(『ABEMA Prime』より)

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