就職氷河期世代Aさん(50代)
【映像】「朝が怖くて震えて泣いた」就職氷河期世代のAさん(50代)
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 バブル崩壊後の厳しい就職環境で就職活動を行った世代、就職氷河期世代。この世代の人々はどのような苦労をしてきたのか。

【映像】「朝が怖くて震えて泣いた」就職氷河期世代のAさん(50代)

「当時はだいたい50社ぐらい手書きの履歴書を送ったが、あまり返信がなかった。面接まで行ったのは5社前後」(50代のAさん)

 専門学校卒で、1995年前後に就職活動を経験した、現在50代前半のAさん。当時は就職氷河期といった雰囲気は感じず、徐々に自身が直面しているおかしさに気づいていったと振り返る。紹介で東京の広告代理店に正社員として入社したものの、職場環境、給料などの待遇は非常に厳しいものだった。

「直接の暴力はなかったが、大声で怒鳴る、物に当たる、物を投げる、『土日に出てこい』、『終わるまでは帰るな』といった行為があった。月の残業も150時間、土日を含むと200時間の月もあった。初めは、(年収)230万円ぐらいで、徐々に上がり500万円近くまで行った。でも翌年にその値段は払えないとなり、99万円ほどを下げさせてくれという話で、400万円ちょっとになってしまった」

 年に10人辞めるほどのブラックな環境で、人の入れ替わりが激しいため、新人に対する教育や業務の指示で仕事が回らなくなり、悪循環が生まれたという。

「正直、体と心はボロボロだった。朝が怖くて震えて泣いてしまったり、夜寝る時も体を縮めて寝る、朝のニュース番組を見ている際に意味もなく涙が流れてきたり、そういう状態が続いた」

 紹介でなんとか入った会社ということもあり、簡単には辞められず…結局Aさんは18年働いたが、退職金はなかったとのこと。その後、転職を決意するも、当時は転職市場も発展途上。好条件の企業には入れず、2社目でも上司のパワハラ、低賃金に苦しむことになった。

「その時は(年収)312万円ぐらい。当時の就職氷河期が、結局ブラック企業ホイホイだった。ブラック企業が安い人材を使い捨てていた事情もあり、デフレ経済で経済が発展したみたいなところもある。このままいくと氷河期世代は棄民、“捨てられる民”にされてしまうのではないかなという恐怖があった」

 現在、フリーライターなどをしながら就職活動中のAさん。年齢やコロナ禍の影響で思うようにいかず、貯金を崩しながら生活する日々が続いているという。

「自分が一番不幸だとは思ってはいないが、運が悪かったとは思う。私は第二次ベビーブーマー世代でもあり、競争社会で過ごしてきた世代でもあったが、当時は社会にとって『数は力』だと思っていたが、不況という敵の前では同世代の椅子の取り合いになってしまい、その力が発揮できなかったのかなと思う」

“自己責任論”と“無敵老人化”への懸念
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