■行動は付け入る隙を与えることに 日本の正しい対応は
現場の対応としては、「物理的に船をぶつけて領海外に出す、武器で威嚇するなどはわかりやすい。ただ、その後に何が待っているか。真珠湾攻撃で日本国民は拍手喝采したが、その先に待っていたものは何か」と、その難しさを明かす。
そして、自身の経験を振り返る。「私は平成28年(2016年)に尖閣警備の指揮官だった。その年は8月に、過去最多となる200隻の中国漁船が押し寄せた。これらは禁漁後に魚を捕りに来ただけだったが、漁船を保護するように中国海警局の船も過去最多の28隻入ってきた」。
その時に、指揮官として“3つの指示”を出した。「絶対に島に上陸させない。これは死守する」「絶対に船にぶつけない。向こうがぶつけてきても、必ず『日本がぶつけてきた』と言う。それを口実に付け入る隙を与える」「必ず証拠のビデオを撮影しろ」。これらの方針のもとで、1週間かけて事態を解決したという。
こうした対応に「弱腰だ」といった批判もあるが、「結果として上陸させていないし、船にダメージも与えていない。死傷者もいない。それがベストな対応だ」と反論する。「大事なのは外交や政治だ。現場でカタを付けようとすると、必ず血が流れ、下手すればウクライナやガザのようになる。現場で踏みとどまり、時間がある程度かかっても、政治や外交で決着がつくのを待つしかない」。
しかしながら日本人の国民性として、「せっかちで、その場で落とし前を付けないと我慢ならない性格がある。だから先に手を出してしまい、その後に取り返しのつかないことに発展する」とも考える。
■もし中国に上陸を許したら…
