■コロナ禍の融資が倒産の引き金に
年間1万件を超えた倒産。イオカさんは2023年に倒産、約3000万円の借金で自己破産した。2018年に立ち上げた企業は内職あっせん業。順調に売り上げを伸ばし、さらに2020年から始まるコロナ禍では、逆に企業からの発注も増えた。イオカさんは好機と捉え「1800万円が電話一本だった」と語るように簡単に融資を受けたが、内職者がコロナにより材料を取りに来られないという事態が続出。その分、外注に回したことで利益が減った。また事業拡大により倉庫を借りるなどしたため、売り上げは増えたが経費がそれを上回る状況が続き、2022年12月に経営破綻、翌2023年1月に倒産した。
イオカさんは「(コロナ禍は)内職という仕事だけ見れば追い風だったが、逆に内職の方が緊急事態宣言で外に出られなくなってしまい(受注した)仕事が溢れてしまった」。倒産に踏み切るまで葛藤はあったが「相談できる相手もなかなかいなかった。僕の周りの経営者はうまくいっているかを話し合うことが多くて、なかなか厳しい状況を話せなかった。4人の従業員には相談してから倒産まで半年ぐらいはあったので、いろいろ話して最後は納得してもらったと思う」と振り返る。
現在は中小企業向けの経営コンサルタントをする藤澤義仁氏も、コロナ禍に一時は売り上げ80億円あった会社の倒産を経験した。2020年には「東京初のコロナ関連倒産企業」と呼ばれ、負債額は84億円にもなった。藤澤氏は「コロナの影響もあったが私自身の経営戦略ミスや財務戦略の立て方がまずかった」と反省する。ただし失敗だけで終わらない。経営破綻後すぐに別の事業をスタートした。「会社が大変だけど周りに相談できないので話を聞きたいという人がすごく多かった。それをきっかけに中小企業を助ける経営コンサルタント業務をやろうと思った」。事業は無事に成功。「もう一回、再起の結果を出さなくてはいけないと思った。そうでなければ潰れたままの人に誰も相談しない」と、自ら再起したことが言葉に説得力を持たせ、さらに相談件数が増えたという。
■日本における「倒産」のイメージ
