いさか氏は「日本のエンゲル係数は、酒や外食も含めると28.3%と、40年以上前の食うのに困った時代の水準に戻っている。先進国の中でダントツに高く、食費を払うだけでいっぱいいっぱいだ。とにかく物価が高い間は、食費を下げたい」と説明する。

 あくまで“緊急経済対策”だとする提案に、小林氏は「すでに低所得者向けの給付をやっていて、今苦しい人たちには手当てがされている。中所得者向けにも所得税の減税が始まり、年末調整で適用される」と返す。「食料品の物価上昇の多くはコメで、それ以外の上昇は1%台に落ちている。コメだけに適用するか、電気代やガス代にも関わるエネルギー代に手当てした方がいい」。

 元大蔵官僚で法政大学教授の小黒一正氏は、財政健全化の必要性から、財源論のない消費減税には批判的だ。小林氏の見解に「直近では1%台だが、2020年比で年平均を見ると、食料品は約25%、光熱費は約14%上がっている」と補足した上で、「消費税を減税したからといって、本当にその分だけ食料品の価格が下がるのか」と問う。

 光熱費の上昇によって、「食料品の生産コストも上がっている。消費税が8%下がっても、実際の売値は下がるのか。消費税は『消費者が負担している』と思いがちだが、法人税のような性質を持っている。過去に法人税を下げたときに、値段はあまり下がらなかった」との懸念を示す。

 いさか氏は、これに「ヨーロッパでコロナ禍の期間限定で消費減税を行ったときは、下げた期間は、ちゃんと物価が下がった。『食料品の消費税がゼロになった』と言ったとき、下げる店と、下げない店のどちらで買い物するか。そんなに商売は甘くない」と反論する。

 そして消費額の総額で見ると、「年間200万円使っている人と、1200万円使っている人は、所得税や普通の消費税なら6倍の差がある」としつつ、「でも食品はせいぜい倍程度しか違わない」と指摘する。「食品に限れば、食べるのに苦しんでいる人が、一番減税される。給付や所得減税では貯金に回り、経済効果がないのが当たり前だが、消費減税ではお金を使わない限り恩恵を受けられない」。

■減税分をポイントで払う?コメとエネルギーに絞る?手法に意見様々
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