■NYで流行の手法とは 日本の自治体は“都市経営”感覚がない?
重松氏が考える変革の1つが、「モダレートインカムハウジング」。これは、賃貸のみのマンション1棟に所得制限をかけて入居者を募集するもので、年収600万円の人は20%(人種などの多様性も考慮)、年収1500万円以下の人は60%、年収2500万円以下の人は20%、などとするものだ。
「モダレートは中流という意味で、ニューヨークで流行っている手法の1つ。アメリカで低所得者というと、周囲の治安は良くなかったが、これをやるといろんな人が自然と出会うコミュニティが生まれたり、低所得者vs高所得者という騒動がなくなって、街が健全になる。家賃も収入に合わせて異なり、そうするとマーケット全体よりは儲からなくなるが、その代わりに固定資産税が20年免除されたりして、デベロッパーもやる価値が出てくる」
日本で同じことができるのか。長嶋氏は「都市計画と都市経営をどうするか、“固定資産税収入を上げるためには街の価値を上げないといけない。ということは、住んでいるみんなに喜んでもらわなくてはいけない”というような経営感覚が、日本の自治体にはない。一方で、デベロッパーや事業者は各場所で自分たちが最大限に儲かることをしようとする」と厳しい見方を示す。
これに重松氏は、「行政がリーダーシップを持ってそういう政策をやればいい。デベロッパーがタワマンを作って分譲で儲けるのは、普通のビジネスなので仕方がない。それでも住めるようにするために、民間が取れないリスクはやはり行政が取らないといけない。“固定資産税を優遇するから住めるように作ってよ”と言って、ビジネスとして全体が成り立つのであれば、民間活用ができてくると思う」とした。
さらに、不動産ビジネスは「“床の呪縛”に縛られている」と指摘している。「床をいっぱい作るか、貸すかしかビジネスモデルがないのが問題。地域貢献として公園・公共空間を作ると言った時、“貢献してくれたら容積率をアップする”ということで、もっと床を作れるようなボーナスがもらえる。結局、きれいな公園を作っても、その周りはタワーの壁。床ではないビジネスモデルを考えて、そのお金をどう捻出するか。床の呪縛から早く逃れないと、そろそろマズイと思う」。
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