■元刑務官「かれこれ60年間、懲らしめの処遇をしてきた」
元刑務官の坂本敏夫氏は、「日本とノルウェーは違う。刑務官の経験から言えば、再犯しやすいのは覚醒剤と窃盗で、ほとんど依存症だ。『刑務所の中で行動の自由がない』と言うが、1人の刑務官が50〜100人を見ていて、その中で受刑者は結構自由に動けている」と、実情を明かす。
現行制度については、「約10年前に変わった法律で、段階的な処遇が規定された。出所間近になれば、外部への通勤や外泊、通話もできる。ただ実際には行われていない。ほとんどは基準を満たさず、逃げられると怖い受刑者だ。かれこれ60年間、懲らしめの処遇をしてきた。出所前に更生の処遇をしていなかったため、法律が変わってもなかなか応用できない」といった課題があるという。
ノルウェーとの違いとして、まずは「作業報奨金がケタ違いだ」という。「ノルウェーは1日1000円程度だが、日本は時給5〜6円。出所時に平均5〜6万円しか持っていない」。報奨金は「入ってすぐは、月1000円程度。熟練すると高くて1万5000円。懲らしめるための強制労働で、恩恵で渡している感覚がある」のだそうだ。
加えて、刑務所長の勤務年数にも差がある。「日本は2〜3年で転勤だが、ノルウェーでは1つの施設に12〜13年いる。日本には“わが施設”という感覚がなく、処遇に対するポリシーも異なる」。
■再犯率高い「依存症」
