■子どものひと言が気づくきっかけに 匿名コミュニティの参加者は年々増加
そんな状態から、どう自分の過ちに気づいたのか。のびおさんは18年前、子どもが産まれて妻がかまってくれなくなったことから、日常的に不機嫌とイライラが募るように。そして、自分vs妻&娘2人の家庭内構図となった結果、モラハラが日常的に発生した。
4年前、長女から「お父さん自分勝手すぎる」と言われたことで、ネット検索で「自分のしてきたことがモラハラ」だと知る。さらに1年半前には、妻に拒絶されて家庭内別居に。離婚カウンセラーに相談したところ、モラハラ=DVと知り、モラハラ加害者の会「GADHA(ガドハ)」につながった。現状は、来春の娘の進学に合わせ、今後の夫婦関係を相談している。
のびおさんはGADHAで、「『悪意のない加害』という言葉があった。良かれと思ってやっていること、自分の中で正しいと思っていることが“加害”だと書いてあり、そうなんだと気づいた」と振り返る。「悪意のない加害者」とは、「大切にしたい人に対して、傷つける意図はなく、大切にする方法がわからないために、加害的な言動を繰り返してしまう人」のことをいう。
GADHAの中川瑛代表(33)は、「“モラハラ”の定義は、識者でも分かれている。“精神的DV”との区別もあいまいだ。机をたたく行為より、『たたくことで自分の思い通りになれ』と、他者を自分の思い通りに支配させようとすることに本質がある。その表れとして、無視や暴言などがある」と説明する。
GADHAは、自ら変わりたいと願うモラハラ加害者が集うオンラインコミュニティー。悩みや自分の弱い部分を告白し、自分の加虐性と向き合うやりとりを匿名で行う。参加者は年々増加し、現在は1400人を超えるという。
入会の経緯は「一番多いのが、離婚や別居のタイミングで、『あなたはDVだ』『モラハラだ』と言われて、調べている中でたどり着く」と中川氏。「男性7割、女性3割だが、参加動機はかなり違う。男性は離婚や別居など危機のタイミングで来るが、女性は『自分がやっているのはモラハラやDVではないか』と思って来る人が8割以上。ジェンダーによって、言動がケア的か加虐的かの判断が異なる部分はあると思う」。
具体的な活動内容は、チャットツール「Slack」での悩み相談や弱音の共有、顔出し禁止のZoom当事者会、1回最大6人が参加できる有償プログラムなど。「一番大きいのは、自分と同じ事を他人が言っていて、かつ反省しているのを見ると、ダメだと感じられる点だ。自分ひとりではわからなくても、他の人を通して相対化することで正義や正しさが他にあると気づくことができる」と語った。
■“悪意のない加害者”にならないために
