「娘が同じような結婚生活を送ったとき、ただ黙ってるだけでいてほしくなかった」夫と向き合い続けることを決めた妻
モラハラが始まった当初、おとなしく言うことを聞いていればいいと従順にしていたかおりさんだが、そうすることでたかしさんの言動はさらにエスカレート。
そこで、かおりさんは向き合い方を考え直すことに。「もし娘が結婚をしたとして、同じような相手との結婚生活の中で、ただ黙っているだけにはなってもらいたくなかった。なので反発というか、ずっと話し合って向き合うという計画を話した」(かおりさん)
とはいえ19年の間には、逃げたり、距離を取ることもあった。離婚届を突きつけたこともある。
そんな時、たかしさんは「(自分は)一生懸命仕事してるのになんでこんな態度とるんだとか、自分が正しいとか“君は何も分かっていない”とか、そういう態度でずっといた」と振り返る。
それでもかおりさんは、折に触れて自己愛性パーソナリティ障害の症状やモラハラの定義を見せ、「あなたのしていることはモラハラだ」とたかしさんに突き付けることを止めなかった。
「最初は、いやここまでひどくないだろうとか、これは違うぞという感じで否定していたんですけど、やはり何度も続くと、もしかしたらそうなのかな?と」(たかしさん)
そして、たかしさん自身もネットなどで調べていくうちに徐々に自覚が芽生えていく。
それに加え、子どもたちからのSOS、警察や児童相談所の介入。さらに、昨年たかしさん自身にがんが発覚したことで、命のはかなさや家族のありがたみに気づくことができた。
「過去を振り返って、奥さんや子どもの立場で考えたときにもうえらいことをしてしまったなと」。
長女の懸命な訴えもたかしさんの心を動かした。「自分はもう間違いなくこの障害を持っていると自覚している」(たかしさん)
かおりさんも「機嫌が悪くなって逆上しそうになった時に、ちょっと黙ったりとか、少し別室に移動したりすることが増えて、明らかに前よりも家庭の中で問題が起きることは減った」と変化を口にする。たかしさんが、努力して変わろうとしてるということだ。
「自分はすごい」なのに「ストレスに敏感」 自己愛性パーソナリティ障害を克服することの難しさ


