それにしても、逃走に気づかない「うたた寝」とは、どの程度だったのか。睡眠治療に25年間向き合ってきた阪野クリニックの阪野勝久院長は、「睡眠の脳波は、基本的にステージN1、N2、N3がある。N3が一番深い眠りで、なかなか起きない。気づかれずに犯人が逃げてしまったということなら、深い眠りに入ってしまったのかもしれない。N3かもしれないが、よっぽど疲労感もあったのだろう」と考察する。
とはいっても、容疑者と相対する緊迫する密室で、寝ることはあるのか。「緊迫感ある場面なので寝るとは、一般の人では考えにくい。ただ実際に起きてしまったということは、急激な眠気が来たと考えてもいい」(阪野院長)。
緊張感がある場面でも、眠気は襲ってくる。過去には、高知地裁で60代の裁判長が証人尋問中に居眠り、JRの運転士が運転中に居眠り。海外では、飛行機のパイロットが居眠りをして、目的地を50キロ近く通り過ぎたケースもある。また、落語家・立川談志の独演会を聞きに来ていた男性が、居眠りしていたとして主催者側に退席を求められ、訴訟に発展したこともあった。
メカニズムとして、「ある一定の睡眠時間を取らなかったなどで、睡眠負債がたまってしまうと、ああいう事例が起きる。脳が限界を超えて落ちてしまった感じだ」と、阪野氏は説明。「居眠り」は気のゆるみではなく、脳が限界を迎えた「防衛反応」だという。
元刑事の秋山氏も現役時代に“居眠り”経験が…
