ネタニヤフ首相は“自爆覚悟”?
「もちろん、イスラエルとしてはここで大きな緊張を作り出すことによって逆にアメリカを関与させようとしていると思うが、アメリカのトランプ政権が果たして、それに応えるかどうかというと、かなり微妙だと思う。そうすると、今度はイラン側が言っていたように、イラク国内の例えば米軍基地を攻撃するとか、あるいはイスラエルの国内に攻撃するということになってくると紛争そのものが大きく拡大していく可能性があるため、否が応でもアメリカはそこに巻き込まれていかざるを得ない。非常に不安定な状況に世界全体がなってくると思う」
━━イスラエル側からすると、もっと中東に目を向けてほしいというメッセージでもあるということか?
「アメリカはイランに核保有させないように交渉を進めてきた。ただ、イスラエルに対しては、アメリカは非常にある種冷たい態度をこの半年ぐらいとってきているため、イスラエルのネタニヤフ首相の苛立ちはあったと思う。ただ、この強硬措置によってアメリカを引きずり込もうという意図があるとは思うが、非常に危険な引きずり込み方になるから、おそらく、ネタニヤフ首相はほとんど“自爆覚悟”のイランの核施設への攻撃だと言ってもいいと思う」
━━このタイミングで核施設を攻撃したというのにはどのような意味があるのか?
「IAEAでも言われているが、今イランの中には400キロを超える濃縮ウランがあると言われていて、これは核爆弾9発分に匹敵する。そしてウランの濃縮がもう少し進むと、今度は実際に核兵器としてイランが保有することができるギリギリの段階であることは確かだ。だから、IAEAも、それから世界の他の国々も、イランに対しては核開発を進めないように常に言ってきたが、イスラエルとしては、もうしばらくするとイランは本当に核爆弾を持つ、その能力を確実に得るというギリギリのところでの判断であることも確かだと思う」
━━イスラエル空軍は「第一段階の攻撃は完了」という声明を出しているが、第二段階の攻撃の可能性はあるか?
「考えられると思う。ただ、これは今回の攻撃に対してイラン側がどのような反撃あるいは抗議行動を起こしていくのかということにもよると思う。実際、去年の4月にはイスラエルとイランは互いにミサイルで攻撃をし合っているが、非常に互いに抑えられた攻撃ではあった。今回の場合はイランにとっても何ものにも代えがたい核施設への攻撃だということがあって、おそらく反撃はしてくると思う。そうなると、イスラエル側がそれに対するもう一度の攻撃があって、それがどんどんエスカレートしていくことが一番今懸念される」
━━例えば核戦争、核攻撃になってしまったりする可能性はあるのか?
「可能性は低いと思う。イスラエルもいくらなんでも自分たちで核を使った攻撃をすることはないだろう。また、イランも核保有には近づいているが、核爆弾は持っていないから、そういう意味では核戦争になることはないと思う。ただし、イランにそれぞれ国益を持っているロシアとか中東の他の国々が関わることによって世界が大きく分断されていって、それがこの戦闘に火を注いでいくという可能性は残ると思う」
━━今後、どのような展開が考えられるか?
「トランプ政権の関わり方が非常に大きく影響してくると思うが、やはりイスラエルに自重を促して、それからロシアや中国がイラン側にも自重を促すということが、うまく進んでいけば、両国の間に火種は残るにしても、一応落ち着く可能性はある。だが、トランプ政権がネタニヤフ首相が自分たちがこれまで言ってきたことに反して勝手に単独行動を行ったということで、もっと強い拒否感を持った場合にはイスラエルとイランとの間の紛争、それからそれに対する反撃は続いていく可能性が残ってしまう」
━━日本の安全保障や経済への影響はあるか?
「戦争や核戦争にならないまでも、日本の石油の輸入の9割を超えるものがホルムズ海峡を通ってきているから、その意味では日本の経済への影響、それから不安感は非常に大きいと思う。今のところまだ様々な形での情報が出ていないがおそらくホルムズ海峡を通過する船舶、タンカーに対する何らかの規制というのがかかってくる可能性はある。そうなってくると、日本に入ってくる石油が止まることになるから、今後はイランの出方、それからこのホルムズ海峡をどうやって航行の安全を図っていくのかについては、日本はきちんと見ていかなければいけないと思う」

